2023 年に注目された 4 つの戦術的なトレンド
2023 年はサッカー界にとって興味深い 1 年でした。ここで、この 1 年の主な戦術トレンドについて振り返ってみましょう。
ボックス型の中盤が台頭
今年主に話題に上がったのはボックス型の中盤です。ペップ (ジョゼップ)・グアルディオラ、ミケル・アルテタ、シャビ (シャビエル・エルナンデス)、ロベルト・デ・ゼルビ、ユルゲン・クロップなど、注目の監督たちに採用されました。
中盤で優位を取りたい監督にとって、この形は、数的優位と位置的優位を作り出して試合の主導権を握り、攻撃を活性化し、フォワードがマーカーをピン止めしてスペースを生むことでライン間のスペースを確保することができる、すばらしい解決策なのです。
選手の距離感が近いため、相手を出し抜いたり、操ったりするための素早く機敏なコンビネーションに適しています。また、2人の10番のポジションの選手を2人でカバーするので、トランジションの際にも適切なカバーができます。
興味深いのは、監督がセンターバックサイドバックをポジション移動させてボックスを作らせる方法がチームによって異なっていることです。このため、個々のDF 相手チーム全体としても、脅威に対処するベストな方法について確信が持てなくなってしまうのです。
ディフェンスユニットが内側に入り込んで中央の狭い場所を使うので、結果的に広いスペースを活かすことができます。
この戦術は、選手が互いに接近していてマークのスキームの問題が複雑化するので、ミッドフィールドのローテーションにも貢献します。
3-2-4-1 や 3-2-2-3 のように、ボックスが変形してダイヤモンド型や非対称の形状にしてさらに混乱をもたらすことができます。。ポゼッションを支配するのが好きで、要求を実行できる高い技術レベルの選手を持っている監督は、ボックスを選ぶことが多いです。
また、ボックスはディフェンスの優れたアセットであることも覚えておいてください。中央に集中したミッドフィールダーがすばやくターゲットに狙いをつけ、カウンタープレスをかけて、有利な場所の高い位置でボールを取り返し、再び攻撃を仕掛けることができるのです。
このシステムがうまくいくかどうかは個人の能力に依存し、監督の采配に左右されるものの、ワールドクラスのハイレベルな戦術家達が示すように、正しく実行できればそれがどれほどの武器となり得るか疑いの余地がありません。
デ・ゼルビ監督の「足裏」戦略
昨年ブライトン・アンド・ホーヴ・アルビオンの監督に就任以降、ロベルト・デ・ゼルビは、アグレッシブな攻撃のスタイルでプレミアリーグに嵐を巻き起こし続けています。その大胆不敵なアプローチに注目が集まるのは当然ですが、人目を引く彼の哲学の側面の一つに、足裏を使ったボールの扱いがあります。
世界のサッカーではあまり使われていない方法なので、どうして選手が足裏を使うのかと多くの人が疑問に思いました。
足裏戦略が意図するのは、プレッサーを引き出して、相手陣内のライン間でプレスの陣形内にスペースを作るように、チームに反応させることです。
その結果、ブライトンはこの方法により、後ろにスペースを取っていたマーカーを誘い出して、ブロックに切り込んで隙間に入り込み、弱点を突くことができるようになりました。
ハーフスペースの中央に広いスペースを作れる条件を整えることで、ブライトン・アンド・ホーヴ・アルビオンの選手はサードマン・コンビネーションやアップ・バック・スルーを使ってチームメイトを直接見つけられるようになりました。
この戦略は、スペースを増やしたり、ディフェンダーの注意を引いたり、素早く攻撃して相手センターフォワード間やウイング間を広く抜いたりするのに非常に優れています。その変化を引き起こすのは、攻撃者を惹きつける最初のきっかけになることが多いのです。
プレスの怪物、レアル・ソシエダ
イマノル・アルグアシル監督が率いるレアル・ソシエダは、そのパワーを誇示してパワフルなプレスを展開し続け、ポゼッションがなくてもオールラウンドで高いインテンシティを出せるエキサイティングなチームです。
レアル・ソシエダは、ボールを失ったときに、ハイプレスの状況でカウンタープレスを選択し、常にボールを高い位置で取り返そうとするので、何度も反則をしてしまいながらも (展開する前に攻撃が止まってしまう)、連携しながら激しく攻撃するところを見るのは楽しいものです。
順調に成績を上げており全員の認識が一致しているレアル・ソシエダが、数多くのディフェンススタッツの中でこの 1 年半の反則数が非常に多いというのは、それ程不思議ではありません。
実際、今シーズンのこれまでと昨シーズンのデータを他のチームと比較すると、欧州 5 大リーグでの PPDA、チャレンジ・インテンシティ、反則数、イエローカード数のランクが非常に高く、レアル・ソシエダがしっかり決める攻撃的なチームであることは明確です。特に興味深いのは、表に示すように、昨シーズンと今シーズンのこれまでは PPDA と反則数がトップであり、さらに、チャレンジ・インテンシティとイエローカード数についてもトップクラスであることです。
アルグアシルの下でヨーロッパで最も優れた指導を受けたチームの一つであることは間違いなく、多面的なラ・レアルがポゼッションでの並外れたプレーを、ポゼッションなしでの積極性で補う方法により、彼らがヨーロッパで対戦相手として最も恐ろしいチームの一つになっているのです。
リバプールにおけるアレクサンダー=アーノルドの変わった役割
リバプールのクロップ監督がトレント・アレクサンダー=アーノルドの役割を変更すると決断したことは、選手とチーム双方にとって大きなゲームチェンジャーでした。
優れた技術を持つアレクサンダー=アーノルドの強みを最大限に活かし、弱みを少しでもカバーする方法を編み出すために新しいポジションを与えたのは、すばらしい決断であったことが証明され、大きな成功を収めました。
ミッドフィールドまで入り込むという指導により能力が最大限に引き出されたことで、アレクサンダー=アーノルドがゲームメークの多様な能力と優れたビジョンを活用して、危険なセンターポジションから打撃を与えられることが証明されました。
アレクサンダー=アーノルドは様々な距離で素晴らしいパスの能力をフルに活かすことができ、巧みにプレーを切り替え、通るパスでラインをブレイクし、接近戦で複雑な連携を行い、正確なスルーパスを後ろに出しています。
アレクサンダー=アーノルドのプレーの読みと独創性によってリバプールに新たな一面が加わっただけでなく、ポジション変更でモハメド・サラーを広い場所でフリーにしつつ、ミッドフィールドゾーンに影響を与えるコントロールを加えることができました。
この戦術はクロップ監督の戦術の枠組みに調和しており、また、アレクサンダー=アーノルドがチームメイトとローテーションしながら敵を混乱させ続けていることも特筆に値します。
この戦術の長所は沢山ありますが、ボール奪取能力の低さ、エラーを起こしやすい傾向、1 対 1 の問題というアレクサンダー=アーノルドのディフェンスの弱さによる欠点もあります。
しかし、彼がこの持ち場で非常に貢献していることは今シーズンの本人とリバプールの成果に示されており、すべてを考慮すればほぼ利点の方が多いのです。
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