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アマチュアスポーツにもプロ並の体験を。Hudlが挑む映像分析改革(前編)

本記事は、AZrenaさんに2019.10.29にご掲載いただいたものを、ご厚意で転載させていただいております。

スポーツの現場における技術面の進化は驚くべきスピードで進んでいる。

2012年のロンドン五輪で銅メダルをとった女子バレーボール・真鍋政義監督が試合中にiPadを手に持ちながらデータ分析をしていたことを記憶している読者も多いだろう。

そこから7年が経過した今では、デジタルの力を借りた分析や競技のサポートは完全に市民権を得たと言える。昨今、多くのデバイスやサービスがスポーツの現場に登場し、十数年前では考えられなかった科学的観点から個人やチームの競技レベルを上げるためのアプローチをすることが可能になった。

映像分析ツール「Hudl(ハドル)」もその1つ。撮影した試合の映像を重要なシーンごとに切り分けメンバーへ簡単にシェアすることができるものだ。これに加え、同社のメインプロダクトの1つである「スポーツコード」を用いれば、チームごとに定義したプレーを登録し、試合中にリアルタイムで記録をすることも可能である。そして、試合後に該当するシーンのみにアクセスし振り返ることもできる。

マンチェスター・シティをはじめ世界中のトップクラブで採用され、日本でもJ1リーグ、J2リーグともに上位争いをしているチームに導入されている、文字通りトップレベルの現場に変化をもたらす一手を担っていると言えるだろう。ただ、彼らにとって“分析市場”はプロだけではない。このツールはスポーツの現場におけるアマチュア・少年少女レベルにまで改革を起こせる可能性も秘めている。

起点はアメフト。そこから“口コミ”で広がる

Hudl社が産声を上げたのは2006年、アメリカはネブラスカ州リンカーンにおける出来事だった。ここに拠点を持つネブラスカ大学アメリカンフットボール部の映像分析とシェアをするために作ったのがそもそものルーツである。いまとなってはクラウド上に様々なデータを共有するのは当たり前であったが、当時は映像をDVDで観るのがメジャーな時代。チームの分析映像は “録画→DVDへ複製→配布” という煩わしい過程で選手や指導者に渡っていった。これをweb完結型にし、スポーツ現場におけるクラウドを通じた映像シェアの先駆けとなったのがハドルである。

「簡単に映像のシェアや分析をできるソフトとして、アマチュアのチームが使い出したんです。アメフト始まりですが、その使い勝手の良さから他競技にも口コミで広がっていきました」

こう語るのはHudl社に勤める唯一の日本人・高林諒一氏だ。前述したようなJリーグのクラブへの導入促進は、彼が日本総代理店であるフィットネスアポロ社のメンバーとともに行っている。

高林氏のtwitterアカウント
https://twitter.com/tkb84_hudl

“シェア”から高度な“分析”へ

チームの映像を簡単にメンバー内で共有できるツールとしてアマチュアスポーツの領域でシェアを広げていった中、1つの転機が訪れる。2014年、オーストラリアの映像分析会社であるスポーツテックをHudlが買収したのだ。目的は同社のメインプロダクト「スポーツコード」の獲得である。

「Hudlの得意分野はチーム内でのシェアと簡易的な分析で、これはアマチュアスポーツ領域に強かったんです。ただ、込み入った分析をするというツールは元々持っていませんでした。逆にスポーツコードはアマチュアではなく、トップレベルのスポーツチームにおける高いシェアを持っていたんです。これは競技問わず、です。つまり、互いの欠けている部分を補う形でこの合併が進んだ形になります」

スポーツコードは「タグ付け」のパイオニアともいえるツールである。例えばサッカーの試合で“相手のシュートチャンスが何回あったか”や“A選手のプレーのみ”を振り返りたいとする。その場合、録画済みの映像をソフトで取り込み、振り返りたいプレーにツール上でチェックを入れる(付箋を貼るようなイメージである)ことで、その当該プレーのみを切り出したダイジェストが見られるようになるものだ。

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上の画像が“タグ付け”のイメージである。タグの入れ方は非常に簡単で、画面上でボタンを生成し、当該シーンのタイミングでそのボタンを押せば良い。試合を振り返りながらその動作を続け、終わったころには記録されたタグから指定のプレーだけを切り取って観ることができる。

現在、国内外問わず多くのプロスポーツチームがこのスポーツコードを導入している。

彼等が利用しているのはハイエンドモデルであり、チームの分析担当者がリアルタイムに試合映像をPCのソフト越しで観ながらタグ付け作業ができるものだ。

「試合中にスポーツコードを立ち上げてタグ付けしていくことで、ハーフタイムに映像を見せながらのフィードバックができるんです。このリアルタイムでの分析は大きなメリットがあります。また、試合後の分析の工程においても、スポーツコードを用いることでとにかく作業の工数が減る。録画した映像をPCに取り込み、編集ソフトでひたすら切り貼りするよりも、スポーツコードでタグ付けしていった方が時間も短縮されるし事後の検索性も高まります。」(高林氏)

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ちなみに、映像共有プラットフォームとしてのHudlの機能に目を付け、リーグとしてオフィシャルに導入を決めたのがベルギー・ジュピラーリーグだ。かつてプレミアリーグの名門・エヴァートンFCを率い、現在はベルギーA代表監督を務めるロベルト・マルティネスが中心となってそのプロジェクトは進行し、2019-2020年シーズンからの導入が決まった。

「ベルギーでは1部と2部の23スタジアムに、AIカメラを設置します。そこで撮影した映像がリアルタイムに出力されるので、分析担当はスポーツコードを使って試合中にも分析ができます。このプラットフォームをリーグが準備するんです。」

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「試合が終わったら各会場の映像が自動的にハドルにアップロードされており、これらに協会だけでなく各チームがアクセスできる。そもそもスカウティング映像の用意って大変ですよね。サッカーに限らずどの競技も実際に見に行って撮影して編集して…となっている。そういった手間やコストをテクノロジーの力でできるだけ削減したいというのが僕たちの思いです。ベルギーリーグでは各スタジアムに設置されたAIカメラから自動的に映像がハドルへアップロードされる形になっていて、全試合の映像を全チームが入手できるようになっているんです。そのプラットフォームにHudlが採用されたということです。ダウンロードする必要もなく、ハドルにログインすれば他チームの映像にアクセスできるという形です。」(高林氏)

(後編はこちら)


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