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予想外の優勝候補に?ユベントスの徹底した、ぶれない守備を紐解く

シーズンの中間点では、インテルがセリエAで最高のチームであるという声が多数。ここまで素晴らしいサッカーを展開してリーグ首位に立っています。インザーギ監督率いるチームが優勝を確信できない主な理由は、予想外にもユヴェントスの存在です。

シーズン前、ユベントスはセリエA優勝候補とは見なされていませんでした。前年のチャンピオンであるナポリは依然として高い評価を受けており、ACミランは夏の素晴らしい移籍結果を経て、タイトル争いの有力候補に見えました。しかし、ユベントスはインテルに続いて一貫した結果を出せる唯一のチームでした。ここまでの結果は彼らの守備局面のおかげだ、と言えるでしょう。

ユベントスは12失点で、リーグで2番目に守備が堅いです。高度な指標にも、裏付けられています。ユベントスはインテルの被xG16.0に次ぐ被xG17.2。両チームはxGと失点の差に関しても類似したデータを持っています。ユベントスの被xGと失点の差は5.2、インテルは7.0あります。アレグリ監督の保守的なアプローチはしばしば批判の的となりましたが、結果として誰もユベントス相手にうまくプレーできていません。

ユベントス唯一の敗北は、シーズン5試合目でサッスオーロ・カルチョに4-2で敗れた時。それ以外で苦しんだのは、アタランタ戦でのスコアレスドローの引き分けのみです。全ての試合で、ユベントスはボールを持っていない場面で試合の流れを支配し、自チームの流れに引き込むことに成功しています。

ユヴェントスのサッカーが攻撃的な才能を持つ選手を最大限に活用する最良の方法であるかどうかは、議論の余地があります。例えば、ミレッティやロカテッリのようなスキルの高い選手よりも、ラビオやマケニーのような体格の良いインサイドフォワードを好むことなどです。しかしひとつ確実に言えるのは、選手たちが監督に対する圧倒的な信頼を持ち、指揮官が目指すサッカーを追求していることです。

なぜ、ユベントスはこれほどまでに強くなったのでしょうか?

ポゼッション外での5-3-2

今シーズンの初めまで、アレグリ監督はしばしば非難されていました。ゲームスタイル以外にも、スターティングメンバーの変更が多い、と。昨年9月のサッスオーロ戦まで、112試合で112回異なるメンバーで試合開始を迎えていました。

今では、ユベントスはかなり標準的なスターティングフォーメーションを持っているように見えます。控え選手たちが、ボールを持たないプレースタイルに焦点を合わせた高いパフォーマンスを維持。

アレグリ監督の理想的な5-3-2のあるべき姿は、ナポリ戦で見られたものです。スチェスニーの前には、右にガッティ、中央にブレマー、左にダニーロからなる守備トリオがプレー。ウィングでは、左にコスティッチと右にカンビアーソが、ワイアとイリングJrよりも一歩前に出ている形です。左にラビオ、右にマケニーが、プレーメーカーのロカテッリを中心にプレーする2人のメッザーリです。前線では、ウラノビッチとキエーザがストライカーに選出されていますが、最近の試合ではイルディズの台頭がうかがえます。

Wyscoutのマッチレポートから作成された、ナポリ戦でのユベントスのスターティングラインナップ

一方で、ユベントスがより攻撃的だった試合もあります。特にインテルのようにバックからのビルドアップが得意なチームに対して、プレッシャーが機能しました。インテルはユヴェントスの選手がプレッシャーのタイミングを誤った唯一の時に得点。ナポリ戦でのユベントスも同様の姿勢を見せましたが、ナポリはビルドアップではなく、ロングパスを使いました。

もちろん、ハイプレッシャーは特定の状況でのみ使用されます。ゴールキックやディフェンスに向かうバックサイドパスなどです。ユベントスはボールを起点として、その周りのすべての相手にマークをつけます。プレッシングスタイルは相手の位置に応じて変化します。

インテルのような3人の守備体制に対しては、インサイドフォワードの1人が2人のストライカーに加わり、センターバックにプレッシャーをかけます。相手がバックからビルドアップする際には、3対3の状況が確保されるようにします。このような場合、ユベントスのセンターバックはフリーになった選手をマークするために前に出ます。例えばインテル戦では、マケニーがバストーニに前進し、その後ろにフリーのムヒタリアンを残しました。そこで、ガッティが前進して彼をマークしました。一方、ナポリのような4人の守備陣に対しては、カンビアーソがゴールキックの際にナポリのフルバックのナタンに向かって前進し、もう一方のサイドでは、インサイドフォワードのラビオがナポリのサイドバックをマークし、マケニーとロカテッリをピッチの中央に残します。

ボールを保持している場合、ユベントスは中〜低位置でブロックに統一し、相手の守備陣にバックパスが送られるときにのみプレッシャーをかけます。

高いプレッシャーが特定の状況で有用であるとすれば、アレグリ監督のサッカーの最善の動きは、自陣でのポジショナルディフェンスです。ユベントスは、5-3-2フォーメーションでピッチの中央を封鎖し、彼らをフィールドの両サイドへと誘導。そこで、サイドラインの支援を受けて、インサイドフォワードとウィンガーが相手により攻撃的にプレッシャーをかけます。ユベントスのPPDAデータ※(12.04、リーグで7番目に高い)は、彼らが重心を下げることを好むとを証明しています。
※Passes Allowed Per Defensive Actions(パスごとの守備アクション値)

Wyscout Serie Aシーズンレポートから、今シーズンのユベントスのPPDAデータ

ユベントスがこの戦略によって機能する為には、ピッチ中央の選手たちの身体能力が重要です。3人の先発ミッドフィールダー、ラビオ、ロカテッリ、マケニーは185cm以上あり、コート中央で密度を作るのに役立ちます。2人のウィング、ラビオとマッケニーは素晴らしいスピードとストライドを持っており、走力が要求されるアレグリ監督の5-3-2に最適です。

ウィンガーと1人のインサイドフォワードがサイドに移動すると、他の4人のディフェンダーとロカテッリをペナルティーボックス内に配置して、すべてのクロスをブロックします。ユベントスの全てのディフェンダー(控えを含む)が集中力とクリアランスに優れており、常にピッチの危険ではないエリアへクリア。ペナルティボックスの守備では、ロカテッリの関与が称賛されます。彼はすでにサッスオーロ・カルチョで自陣でのバランサーとしての役割を身につけていましたが、ユベントスでさらに強化されました。

攻撃フェーズの影響

現代のサッカーでは、攻撃が守備の選択にも影響を与えることが多いです。チームが上手く組織された場面でボールを失うことは、良いネガティブトランジションを意味します。

ユベントスでは、守備的にカバーをするという考え方が攻撃戦略に影響を与えます。ピッチ上でのポジショニングとビルドアップの構造は、リスクを回避する意志に依存しています。危険なボールを失って相手に渡すのを避けるために、最初のポゼッションフェーズをあまり細かく持っていません。

ビルドアップを進める際、中央のエリアでパスすることを好みません。なぜなら相手がボールを奪って、素早くカウンターアタックを仕掛けやすくなるからです。そのため、ほとんどの場面で選手に幅広いエリアでのビルドアップを展開するよう求めます。ウィングでボールを失う方が中央で失うよりも危険性が低いからです。

ユベントスがピッチの中央ではなく広いエリアでビルドアップを好む方法の視覚化、
Wyscout Juventusチームレポートより

選手の配置はポゼッション中のリスク回避にも影響を受けます。ほとんどのチームは、ビルドアップ時には3人となる4人の守備陣を持っていますが、ユベントスは逆をすることも。3人のセンターバックで守備し、ビルドアップ時に4人の守備陣を持ちます。コスティックが左フルバックとして深く位置取りをし、ガッティが右フルバックへ。これにより、ボールを失った場合にバックに1人多くの選手を置くことができます。

通常、3人の守備陣では、攻撃時にウィンガーが広いスペースを作ります。しかし、ユベントスでは、しばしばマケニーが右側で広がったり、キエーザが左側で広がったりします。これにより、ラビオやコスティッチが左側で深く座り、潜在的な守備的トランジションを吸収することができます。カンビアーソとガッティも右側で同じことをします。ちなみに、マケニーは前線で広く戦っていてもすぐに後ろに走って戻れるので、トランジションで助けることができます。

繰り返しになりますが、非ポゼッションフェーズはユベントスの強みとなりました。しかし、セリエAでタイトルを獲得するためにはゴールを決め、試合を勝ち取るチャンスをより一貫して見つける必要があります。

最近、ユベントスは心理的な優位性も兼ね備えているように見えました。どんなに守備的な戦術であっても、自分たちのゲームプランを疑いません。強豪を含めて相手チームは、この姿勢にしばしば打ちのめされ、ユベントスのペースから逃れようとしても答えを見つけるのに苦労します。

この安定感はいつまで続くのでしょうか?引き続き、注目が集まります。




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