「優秀なスタッフが3人増えた感覚」宇短附サッカー部が躍進する理由
2021年4月〜5月にかけて行なわれている関東予選大会で躍進中の宇都宮短期大学附属高校サッカー部。女子部は栃木県大会優勝・関東大会進出、男子部は準決勝進出と確実に成果を出しています。
昨年度新型コロナウイルスによって中止になってから1年。ようやく結果を残せる舞台で勝ち上がっている背景には、コロナ禍の昨年に導入したHudlの存在がありました。
どのように活用しているのかや、今まさに実感しているチームの成長について、岩崎陸(いわさき・あつし)監督にお伺いしました。
部員184人全員で“宇短附サッカー”を作るために
前職でたまたま映像分析ソフトの実験的なサービスに触れたのが、私の映像分析との出会いでした。私自身かつて慶應義塾大学体育会ソッカー部、NTT四国サッカー部(当時地域リーグ)、神奈川県の一部リーグでフットサルをプレーし、また2016年まで慶應義塾大学体育会ソッカー部の監督を務めており、どのチームも映像を活用してきたので、映像を共有する大変さを感じていました。フットサルでは、マメなチームメイトが、DVDに都度焼いて共有してくれていたのを覚えています。そういった経験もあり教員になった今、サッカー部にHudlを導入しました。
私たちが所属している県リーグには強豪チームが揃っていることもあり、リーグ戦で優勝しているチームが高校選手権でも勝つ傾向にあるんです。そのため、1年を通じてリーグ戦で結果を残すことを重要視しています。1試合1試合しっかり準備をして、振り返って、また次の試合に向けて準備をする。このプロセスを大切にしています。
「部員184人全員でサッカーをする」ことも大事にしています。トーナメント戦に出るのは25名と限られますが、リーグ戦は全部で5チーム出場しています。チームが違っても同じクラブの一員、根本で大切にするサッカーは一緒にしよう、と。レベルが異なる話ですが、FCバルセロナだとどのチームを切っても、あの美しいサッカーをしますよね。私たちも、どのチームを見ても宇短附だと感じられるようにしていきたいです。
間が短いリーグ戦で振り返り、個々が成長するとと共に試合に勝っていくため、大人数でひとつのサッカーを創り上げるためのツールとして、Hudlを使用させていただいています。
わざわざ時間を割かずとも、定量的な分析が可能に
指導者としては、Hudlの導入でより定量的な指導ができるようになったと感じています。リーグ戦に出場している5チーム間で、何が違うのかを数値に落とし込んで分析できるようになりました。
同じサッカーのプレースタイルでも、パスの合計本数やその成功率が違っていたり。1部と2部、2部と3部で何が違うのか、わかりやすく比較できています。
宇短附で今重要視しているのは、パスの本数とシュート数です。点を取らないと勝てないスポーツのためシュート数はもちろん、シュートに至る過程も振り返っています。ポジションごとのパス成功率が出るので、どこに課題があるのかが明確にわかります。たとえば「相手のゴール前でのパスが少ない」となると、相手陣地での侵入を増やす認識作りに力を入れるというふうに、練習に落とし込んでいますね。
ディフェンスでいうと、攻撃へのトランジション数を見ています。自分たちのボールの支配率が高くても、相手の方が攻撃へのトランジション数が多ければ、かなりやられている状況です。そこの相関関係を評価しています。
Hudlを導入する前は、集計のためだけにミーティングをしていました。Aグループはスローインを数える係、Bグループはシュートを数える係、などと部員を分けて。皆で集まって見る楽しさもありましたが、練習時間が放課後に限られている中では厳しくもありました。「今週は時間がないからできない」ということも少なくなかったです。
今は試合映像を送信すれば自動でタグ付けして返してくれるHudl Assistを導入しているので、わざわざ数値分析のために時間を割かずに済むようになりました。おかげさまで、とても優秀なスタッフが3人くらい増えたような感覚です。
Hudlが「この試合で活きた」というよりも、もう毎試合力になっていますね。トーナメント戦になると、中2日でもう次の試合、とういうこともあります。連戦でも自チーム、他チームの分析がその日のうちにできるので本当に助かっています。
関東大会予選上位進出。確実に見えてきたチームの成長
分析で出てきた重要な数値は、映像とともに選手に見せて伝えています。私と顧問の成島明仁先生(体育科教員、東京学芸大学出身)で分析し、「Good」「improvement(改善)」というタグを作って、このタグの動画を選手に見てもらうようにしています。
現状の課題や練習での取り組みについて、選手と間違いなく意識があってきているように感じますね。他チームの分析もしてはいますが、7:3くらいで自チームの分析に時間をかけています。
リーグ戦だと1年間に同じチームと数回当たるので、試合ごとにどのくらい改善できているのかがわかります。去年の対戦と、今年の対戦の比較もできます。徐々にではありますが、チームの成長度合いが現れてきているかなと。
もともと映像は全てわれわれスタッフ主導でアップロードしていましたが、最近は選手でタグ付けをしたり、クリップ集を作成したりしています。Hudl内で出てくる英語に苦戦し、選手からよく質問がありましたが、1年経って慣れてきたようです。
映像に関する選手からのアクションがこの1年で増えました。われわれが忙しくてアップできていないと、むしろ「アップはまだですか?」と言われることも(笑)。
スマホやPCで見られるので、映像を自宅で見ている選手も多いです。選手の父親の方が一人海外転勤になったのですが、Hudlで試合の映像を見てくれているみたいで。本人も「良いプレーをして見てもらいたい」と言っていて、モチベーションに繋がっているようです。こういったコミュニケーションをとるツールにもなっています。
映像分析に関して教員的な視点で見れば、今の高校生は1年生から統計解析を学習しています。例えば経済分野で解析を学ぶこともできます。でも、せっかくなら身近で興味がある分野で学習する方がわかりやすいと思うんです。Hudlは、ひとつの学習ツールでもありますよね。
最近どんどん広まっていて、すでに「映像を見ていて当たり前」という時代になってきていると思います。そうなってくると、分析した情報をどのように使っていくのかといったノウハウの蓄積が勝負を分けていく時代になるかと。われわれももっと追求して、強い“宇短附サッカー”を作っていきたいです。