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強豪国へと進化を遂げた車いすラグビー日本代表。ビデオアナリストが明かす分析の裏側

映像分析ツール『Hudl(ハドル)』は、試合動画をアップロードするだけで、24時間以内にスタッツ集計やタグ付けなど詳細なデータ分析を代行。世界中のスポーツチームで映像分析の一翼を担っています。

車いすラグビー日本代表も、Hudl Sportscode(以下、スポーツコード)を使った映像分析に力を入れているチームのひとつ。東京2020パラリンピックでは銅メダルを獲得、今年7月に行われた『三井不動産 2023 ワールド車いすラグビー アジア・オセアニア チャンピオンシップ』では世界王者オーストラリアを下し、パリ2024パラリンピック出場権を勝ち取るなど、名実ともに強豪国へと進化を遂げました。

今回は、車いすラグビー日本代表を支えるビデオアナリストの中谷英樹(なかたに・ひでき)さんに、Hudlを導入したきっかけや、Hudlの活用によって起きたポジティブな変化についてお話を伺いました。

Hudl導入後、選手たちの「映像チェック」が習慣化

ー車いすラグビー日本代表チームでは、どのようにHudlを使っているか教えてください。

主な使い方としては、練習中に映像を撮影し、スポーツコードを利用してリアルタイムでタグ付け、編集した動画をコーチや選手に共有しています。

今年度の途中からHudl Replay (ハドルリプレイ)を導入したため、映像を瞬時に振り返ることができるようになりました。選手にも今まで以上に素早く映像を共有できています。

合宿が終わった後も、Hudlがあれば大会の映像をオンラインで共有できるので、いつでもどこでも動画をチェックできて便利ですね。

ーHudlを導入されたきっかけは何だったのでしょうか?

きっかけは、ケビン・オアー前日本代表ヘッドコーチからのリクエストです。試合や練習の特定のシーンを気軽に振り返ることができる点に魅力を感じていました。ただ現在は、選手の戦術理解を深めることをメインに活用しています。

ー具体的にどのようなリクエストがあったのでしょうか?

最初に「ディフェンスのブレイクアウェイのパーセンテージを出してほしい」と言われました。日本代表の強みは「簡単に得点を許さないこと」だとケビンヘッドコーチは考えていたので、チームとしては守備を意識して強化に取り組んでいました。この方針が選手に共有されてからというもの、コーチ陣と同様、選手たちもディフェンスの指標に注目するようになりました。

ー選手たちにも変化があったのですね。Hudlの導入によって、他にはどういった変化がありましたか?

大きな変化としては、選手に映像を見る習慣がついたことでしょうか。自分たちの映像や他国の映像がアップされると、選手たちもすぐに映像をチェックするようになりました。

世界各国の代表チームで映像分析が普及

ー中谷さんの1日のスケジュールを教えていただけますか?

朝に簡単な機材の準備をし、午前の練習を撮影します。その映像をタギング(タグ付け)し、昼休みに少し編集をしてHudlにアップロード。同時にタグ情報もエクスポートします。

午後も同様の作業を行い、夕食後に行われるビデオミーティングの前に全映像のアップロードを終えるようにします。強化合宿のときは大体このようなスケジュールです。

ー朝から晩までみっちりですね。大会期間中はいかがでしょうか?

大会にもよりますが、世界選手権の場合は参加国が非常に多いので、予選期間中は特に忙しくなります。

朝10時から夜8時まで、約2時間毎にAコートとBコートの両方で試合が行われるので、日中はせわしなく動き回っています。全ての試合をリアルタイムでタグ付けすることは難しいので、どうしても試合が終わってからの作業になってしまうんです。

ーかなり忙しそうですね。

どのチームが決勝トーナメントに勝ち上がるか分かりませんし、車いすラグビーは大会数も多くないため事前情報も少なく、大会期間中の情報収集が極めて重要なんです。大会が始まってから最初の3日間は、深夜まで編集作業が続くこともあります。

ー現在も編集作業や映像分析にかなりの時間を費やされていると思いますが、Hudl導入前後で作業時間は変わりましたか?

かなり変わったと思います。今でこそリアルタイムで作業できていますが、もともとは全ての撮影が終わった後に、優先順位をつけてタグ付けをしていました。

導入前は、毎日が大会期間中のような忙しない日々を送っていましたが、現在は睡眠時間を5〜6時間ほど確保できるようになったので、以前と比べると大幅に作業時間を削減できたと思います。

ーそれは大きな変化ですね。近年スポーツ業界では多くの競技で盛んに映像分析が行われていますが、車いすラグビーではどれくらい映像分析が普及していますか?

世界各国で普及している印象があります。イギリスやオーストラリアはスポーツコードを使っているようです。

目標はパリパラリンピックでの金メダル獲得

ー今年8月より新しく岸光太郎氏が日本代表のヘッドコーチに就任されました。ヘッドコーチの交代によって何か変わった点はありますか?

岸ヘッドコーチはケビンヘッドコーチの元で選手としてプレーしていたという事情もあり、基本的な戦術は以前と大きく変わっていません。ただ、岸コーチがいくつか指摘している改善点については注視していきたいです。

現在フランスで開催されているラグビーW杯に合わせて、車いすラグビーも世界ランキング上位8カ国が参加する大会が行われます。この大会で岸コーチが改善点として挙げているポイントが、どの程度修正されているかをチェックしたいですね。

ー選手経験の有無によって指導方法に違いはあるのでしょうか?

岸ヘッドコーチの就任からまだ1回しか合宿が行われていないので、あくまで個人的な感想ですが、選手経験がある岸コーチの場合、より細部に目が行く傾向があるように感じます。ポジションや車いすの向きなど、個人のプレーに対して具体的な指導をすることが多いかなと。

逆に、車いすラグビーのプレー経験がなかったケビンコーチの場合は、大局的な視点で指導されていた印象があります。もちろん細部についての指摘もありましたが、どちらかと言えば全体的なスペースの使い方など、より戦術に近い部分の指導がメインだったと思います。

ー戦術面やプレーなどで参考にされている競技はありますか?

車いすバスケは共通点が多いので参考にしています。特にポジションの取り方はかなり似ているのでよくチェックしています。車いすバスケから盗めるところはたくさんあるかなという印象ですね。

ー最後に、今後の目標をお聞かせください。

日本代表チームの目標は、パリパラリンピックでの金メダル獲得です。この目標を達成するためにも、個人としてはチーム全体のレベルアップに全力を尽くしたいと思っています。

特に注力したいポイントは、かねてからの課題であるバックアップメンバーのスキル向上です。日本代表チームは長らく固定メンバーで戦ってきたので、パラリンピック本番までに選手層の底上げを図らなければなりません。全てのメンバーがより深く戦術を理解できるように積極的にサポートをしていきたいです。

パラリンピックまでにいくつか国際大会があるので、その大会の中でしっかり情報収集をして、他国の対策を行いたいと思います。

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