広く、バスケットボールを吸収する。アマチュア指導者がNBAから学べることとは
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広く、バスケットボールを吸収する。アマチュア指導者がNBAから学べることとは

バスケットボール指導者やアナリストの方々に、映像分析へのさらなる理解を深めていただくことを目的に開催した「Hudl Tip-Off」。Hudl Japan公式noteでは、いくつかのセッションをピックアップしてバーチャル講義の内容をお届けします。

今回は、全米大学スポーツ協会に所属する女性ヘッドコーチとして初のNBAでの採用となったLindsay Gottlieb氏の、NBAまでの道のりや指導者としての考え方に迫りました。大学スポーツ界でキャリアを重ねNBAを経験した彼女が大切にしている指導観とは?アマチュアレベルの指導者が、NBAから学べることもお聞きしました。

<今回のスピーカー>
Lindsay Gottlieb氏
現在University of Southern California Trojans女子バスケットボール部のヘッドコーチを務める。2009年にUniversity of California Santa Barbara Gauchosで指導者としてのキャリアをスタートし、3シーズンで2つのチャンピオンシップ優勝にチームを導いた。2019年、NBA Cleveland Cavaliersのアシスタントコーチに就任。全米大学スポーツ協会に所属する女性ヘッドコーチとして初のNBAでの採用となった。


常にベストを尽くして指導した経験が、NBAへと繋がった

ーまずはご自身のキャリアについて教えてください。

ニューヨークの郊外で、スポーツ好きの弁護士一家に生まれました。家では大抵、ある事件かスポーツについて話していることが多かったですね。なので、どちらかの分野で自分も生きていくのだろうなというのは自然と感じていて。

年齢が上がるにつれ、スポーツに関わる仕事がしたいと思うようになりました。当初は、スポーツキャスターやスポーツライターといった“伝える”側の仕事をイメージしていました。

ーいつから指導者という職業を志すようになったのですか?

大学時代に、指導者という職業に興味があることに気づきました。ブラウン大学にプレーヤーとして進学したものの、ベンチにいる時間が長くて。でも実はベンチで試合を観ている時に、コーチングへの関心が強まったんです。

コーチは立派な職業ですし、映像を見たりゲームプランを立てたりやっていることがおもしろいなと。選手に、「あのプレーや場面でどうするのが良いと思ったのか」を聞いて、ベンチで考えるようになりました。


もうひとつ、コーチが魅力的だと思ったポイントがあります。私は、体育会系のチームに所属している友人がたくさんいました。指導の仕方や練習方針、チームの雰囲気など、チームの話題のほとんどが何かしら指導者と関係していることに気づいたんです。悲しかったことも嬉しかったことも、全てです。指導者がスポーツの中で果たす役割は大きいと思いました。

ーそして大学卒業後、コーチに。NBAまで着実にステップアップされた印象があります。

そうですね。「これをやらなければいけない」「ここで必ず優勝しないといけない」などと“強制”で考えたことはありません。そう考えてしまうと、指導者としてしんどくなるかなと。常にその時のベストを尽くそうと、全力を出してきた結果が今に繋がっていると感じています。

キャリアの中でも、リッチモンド大学で1年目のヘッドコーチのもとで仕事をさせていただけたことは大きかったですね。0から体制を整え、チームを作っていくところを間近で体感できました。どれだけ名監督でも、20年間同じ場所で指導している人とは違った経験ができたと感じています。

またアシスタントとして活動していた時は、選手全員分の映像をまとめていました。今では誰もやらないと思います(笑)。今振り返ると、映像から学んだことも多かったです。指導者として多様な経験を積んだことが、間違いなく今に繋がっています。

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個を活かす理論的なプレーと、フォローの厚さ。NBAの強み

ー大学レベルでの指導経験が、NBAで活きたことはありましたか?

ありました。例えば、近年のNBAではゾーンディフェンスがよく見られるようになりました。2020年にゾーンディフェンスを取り入れたマイアミ・ヒートがNBAカンファレンスファイナルへ進出し注目を集めて以来、真似するチームが増えたんです。大学レベルではゾーンディフェンスが多いので、NBAのコーチ陣の中でも経験値がありました。

NBAは、間違いなくバスケットボールの最高峰。最大限吸収できるよう、時には自分の専門範囲を超えてでも意見したり質問をしたりしていました。女性として考え方の違いもあると思うので、しっかりコミュニケーションをとるようにしていましたね。


ーそしてNBAから、再び大学スポーツ界へ。大学レベルでの指導において、どういったところがNBAから参考にできるところですか?

ひとつはスペーシングです。NBAのスペーシングは、感覚ではなくとても理論的で。選手の一人一人の高い能力を活かすことが重要視されています。

対して大学レベルではポストプレー(※)が忠実に守られている場合が多いです。NBAでは一人ひとりが活きるスペーシングも大切にしながら、ポストプレーも有効に使えないかを常に考えていました。ゴール遠くの位置でも個が生きて、チャンスが来たらポストプレーでも得点をとれるようなバスケットボールですね。

※バスケットボールで、相手ゴール近くに長身あるいはボールさばきの上手い選手を配置して、選手をボールを集めて得点を狙うプレーのこと。


あとは、選手とスタッフが密に関わっているのもNBAの特徴です。それぞれが自分の分野に特化して、映像・栄養・コンディショニングなどとさまざまな視点から選手に関わっています。一人ひとりの選手を丁寧にみる環境がありますね。

大学レベルではここまで人手が割けないのは仕方がないことですが、考え方は取り入れられると思います。それこそ映像やデータを使って選手をより理解した上で、一人ひとりに関わることはできると思います。若いスタッフにとっても良い経験になるのではないかと。


ーNBAの選手の動画を、大学生の指導に使うことはありますか?

もちろんあります。選手にとって必要なことを見極め、手助けをするのが指導者の役割ですから。

例えば、前回の練習映像からテーマを持って動画を切り抜き、練習前に選手に見せています。5プレーは良かったプレー、5プレーはもっと改善できたプレー。5〜10分くらいで振り返って、その日の練習に活かしています。


指導者の役割は、自分らしくプレーできる環境を作ること

ーバスケットボール界では、女性指導者はまだまだ珍しいと思います。そこに対して抵抗を感じたり、女性として難しいと感じたことはあったのですか?

選手とは全く同じ施設の中で日頃過ごしていましたし、「女性だから」と言って何かが変わっていたことはありません。選手も他の皆さんと変わらずに受け入れてくれて。

NBAの選手はとても賢いですし、伝えたことをすぐにプレーに落とし込む能力を持っています。日々彼らと全力で向き合うことが、指導者としての信頼に繋がると思いました。

NBAで結果を残すにあたって性別を壁として感じたことはないですね。「自分に何を求められているか」を理解して常に全力を尽くすこと。ただそれだけです。

ー真摯に向き合うことで、選手との良い関係性を築いていったのですね。

はい。個人的な話をすると、これまでずっと母国で生きてきて「アウェイの人、外部から来た人」という立場が初めてでした。そこは戸惑いましたね。でも選手が最もパフォーマンスを発揮しやすい環境を考えると、「自分らしくプレーできること」かなと。なのでできるだけ性別など関係なく、ありのままの自分で接するようにしていました。

ー大学生の指導の方が人間性の部分の指導も大きいのかと思いますが、NBAではどうだったのですか?

コーチングにおいて、人間関係は避けて通れない部分です。人との繋がりを上手く活かさなければ成功はできないと感じています。

交わす会話こそ異なりますが、選手との普段のコミュニケーションを大切にすることには変わりありません。時にはプライベートの話もしますし、冗談を言ったりもします。

大学生は、かなり多感な時期。学校生活やプライベートもあって、バスケットボールは人生のほんの一部です。選手自身がどのような人になっていきたいのか、どのようにすればなれるのか、指導者としては何ができるのか......。

一人の人間としてどうなりたいのかをサポートするのが指導者としての責任です。大学生の方が、選手の今後に影響を与えやすい部分はあると思います。


ーここ近年、指導の参考にできるリソースはとても豊富です。例えばTwitterでは直近のNBAキープレーをまとめてくれているアカウントもあります。指導者の方々へ、どのように情報収集することをおすすめしますか?

情報にアクセスしやすいのは良いことですが、取捨選択に迷うと思います。ひとつ言うなら、「箱に入ってしまうな」ということ。私が大切にしていて、指導者として成長できた考え方のひとつだとも思っています。

私は常に、「ここがもっと知りたいです。最も詳しい人は誰ですか?」と聞いてきました。時にはNBAレベルでも繋がりを作って見学に行かせていただいたこともありました。できるだけさまざまなバスケットボールを見て吸収しようとした結果が、NBAでの人脈構築、そしてNBAでの指導経験に繋がりました。 

自分たちのバスケットボールだけを分析するのではなく、視野を広げてさまざまなバスケットボールのプレースタイルに触れてもらいたいです。

確かにまとめてあるものは便利ですが、全てだとは思わないで欲しい。その上で、与えられた期間の中で今取り組むべきことを取捨選択して、取り組んでいって欲しいですね。

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スポーツの映像分析システムを開発しているHudl(ハドル)社の日本チームです。 様々なTipsや海外事例、さらには国内のユーザーインタビューなどを定期的にお届けしていきます。 #Hudl #スポーツコード #ワイスカウト