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欧州とJの“王者”のトレンド。コロナ禍でスカウトと育成に変化が

Hudl Japanがプロサッカークラブの関係者に向けて、2時間半にわたって開催したウェビナー「世界から学ぶ」。

元マンチェスター・シティのヘッドアナリストで、現在はHudl社にてカスタマーソリューションチームのディレクターを務めるエドワード・サリー氏が、自身の経験をもとに世界のトレンドとデータ活用について解説しました。

21歳以下の出場機会をいかに増やすか

勝利するチームには、2つの大きな要素があります。選手とコーチです。FIFAの専門調査機関・CIESの調査によると、世界132リーグでプレーしている選手の国別人口ランキングで、日本はアジアで唯一トップ20にランクインしています(9位)。また、6位のセルビアは、700万人しか人口がいないにも関わらず、1,377人の選手を輩出。効果的に有望な選手を生み出していることが分かります。

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2019年の各国の代表選手の中で、ヨーロッパでプレーする選手の割合を見ると、日本は37人。韓国は11人、中国は1人なので、ポジティブな結果が出ていることが分かります。

そして、注目したいのが、21歳以下のトップチームレベルでの出場時間です。この数字は、当該選手の今後のキャリアに大きな影響を与えることが、CIESの調査で分かっています。Jリーグにおける過去3シーズン(2017〜2019年)の21歳以下の出場時間を見ると、1部に比べて2部の選手のほうが時間は長くなっています。これは世界全体にも言えることです。

「才能ある選手は、できる限り大人のリーグでプレーしなければいけません。レベルに関係なく、18〜21歳までの間にプロリーグでプレーした試合数と、その後のキャリアパスには明らかに正の相関関係があることが分かっています」
(CIES ラファエレ・ポーリ)

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若手をいかにトップレベルでプレーさせるかは、どのチームも直面する課題だと思います。横浜F・マリノスの21歳以下の出場時間を見ると、過去3シーズンの中で、優勝した2019年に初めてリーグ全体の平均時間を超えました。つまり、21歳以下の出場時間を増やしても、優勝できる可能性は十分にあるということです。

次に、Jリーグからヨーロッパへ移籍した、久保建英、冨安健洋、堂安律、食野亮太郎の4選手にフォーカスします。彼らの渡欧前3シーズンの出場時間を見ると、冨安は移籍前のシーズンに長時間プレーしていることが分かります。そのほかの選手は、1000分の出場時間を得ることに苦労していました。

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ヨーロッパのスカウトの観点からすると、出場機会が少ない若手の獲得はチャレンジになります。彼らの十分なプレーデータがないからです。

欧州とJで共通する王者のトレンド

チームを持続的に発展させていくには、クラブとしてどのようにプレーしたいかが重要です。ブンデスリーガ、リーガ・エスパニョーラ、プレミアリーグの3大リーグと、欧州チャンピオンズリーグを例に、世界のトレンドを見ていきます。

すると、どのリーグの王者も、ポゼッション率(ボール支配率)が非常に高いことが分かります。欧州チャンピオンズリーグに関しては異なる傾向がありますが、各出場チームのレベルが拮抗してきているからだと考えられます。

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Jリーグでも、過去3シーズンの優勝チームはポゼッション率が高いです。また、ポゼッション率だけでなく、平均パス数も多いことが分かります。プレッシャーがかかる中でどれだけパスを繋げるかは、勝利を目指す上で重要な要素です。これはグローバルのトレンドに沿っています。

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マンチェスター・シティでテクニカルディレクターを務めるチキ・ベギリスタイン氏は、「サッカーの戦術は多種多様で、クラブがどれを選んでも問題はない。では、マンチェスター・シティがなぜポゼッションスタイルを選ぶかというと、それが最もエキサイティングで、ファンが喜ぶからだ」と語っています。

全クラブがポゼッションをベースにする必要はありませんが、世界のトレンドを知っておくことは重要でしょう。

変化を強いられる「スカウト」と「育成」

サッカーには、大きく分けて2つのクラブの種類があると思います。1つは、選手を育成したり獲得して、自チームをさらに成長させるクラブ。もう1つは、選手を育成して、他クラブに売却することで利益を得るクラブ。前者はバイエルン・ミュンヘンやバルセロナが有名で、後者はほぼすべてのブラジルのクラブが挙げられます。

ブラジルのクラブは、育成した選手をヨーロッパなどのクラブに売ることで、持続的にクラブを運営しています。両方の部分をやろうとしているチームもありますが、その場合はより一層の人やお金が必要になってきます。

選手を獲得するプロセスにおいて、ソースは3つあります。仲介人、データ、そしてスカウト部門です。どれも重要な役割を担っていますが、新型コロナウイルスの影響で大きな変化がありました。

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コロナ前のスカウティング活動は、80%は現地観戦で、20%は映像視聴だったと思います。国や地域によって異なるものの、コロナ禍では現地観戦が困難になり、多くのクラブが映像を頼らざるを得なくなりました。Hudlユーザーの中には「この状況下において、スカウトのプロセスで映像やデータを使わないのは、スカウトとは呼べないのではないか」と語る方もいます。

そして、選手の育成にも変化が必要です。プレミアリーグには「エリート・プレーヤー・パフォーマンス・プラン」という育成プランを展開していますが、コロナ禍でどのようにデジタル化を図っていくかが課題として挙げられています。

一方で、FCバルセロナのイノベーションハブという組織は、オンラインのトレーニングプログラムを販売するプラットフォームを作りました。今年は200〜500万ユーロの収入を見込んでいるとのことです。このように、新型コロナウイルスは、サッカー界に様々な変化を強いています。

第2弾へ続く

●プロフィール
エドワード サリー (Edward Sulley) 
各クラブや団体のニーズに合わせたコンサルティングや分析、システムを提供するHudl社のカスタマソリューションチームのディレクター。
19年間のプロサッカー界での経験を持ち、世界で最も速いスピードで成長している団体の1つであるシティ・フットボール・グループ(CFG)で11年間にわたり7クラブ(マンチェスター、ニューヨーク、メルボルン、横浜、ジローナ、モンテビデオ、成都)と働き、Hudlにジョイン。
CFGでの最後の5年間は日本と中国のクラブにおけるサッカーの戦略の策定と実行を主に担当。
経験や資格はコーチング、パフォーマンス分析、スポーツ科学、メディカル、スカウティング、リクルート、リサーチ、イノベーション、戦略、プロジェクトマネジメント、リーダーシップ、と非常に多岐にわたる。

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