エディ・ハウ監督率いるニューカッスル - ヨーロッパの夢を追い求める熱意と体制
今シーズン素晴らしい成績を残したマグパイズ、20 年ぶりにチャンピオンズリーグ出場権を獲得。
今シーズンのプレミアリーグでは、ニューカッスル・ユナイテッドのトップ 4 入りが、大きな話題となりました。エディ・ハウの名采配がチームの大きな力になっています。
新しいオーナーシップの資金力を生かし、十分な検討を経て抜擢されたハウ監督は、自身のサッカー哲学をどうのように効果的に浸透させてチームをまとめ上げるのか、成功へのレシピを示しました。
記事執筆当時、チームは 3 位に食い込み、待ち望んだチャンピオンズリーグ最終戦に向けて順調に進んでいます。アーセナル戦では敗北したものの、直近 11 試合で 8 試合に勝利しており、減速する気配など全くありません。
「選手たちは、今シーズン、ほぼすべての試合で信じられない力を発揮してくれました。」と、先日ハウ監督は力説していました。
「彼らはすべてを出し切ってくれています。残り 4 試合 (記事執筆当時では 3 試合) で、自分たちの努力の集大成を披露して、とてつもない偉業を成し遂げつつあります。それこそがチームの追い求めているものですし、冷静さを保ち、今までやってきたことをきちんとやれば、きっと大丈夫だと思います。」
恐ろしいチームです。強さ、攻撃、エネルギーのすべてを出し切り、一切の妥協を許さない姿勢で向かってくる。このチームなら、20 年ぶりにチャンピオンズリーグ出場権を獲得しないわけがありません。
すべてのフェーズにおいて優れていて、自分たちの強さを強みを最大限に発揮する、非常にバランスの取れたチームです。2021 年の着任以来、週を重ねるごとに着実にチームをレベルアップさせているハウ監督は、大きな称賛に値します。
まずディフェンスの強化から取り組み、団結して、切り込まれたりしても競り負けないタフなチーム作りを目指しています。
粘り強く、コンパクトで連携の良いプレスは、世界が称賛しています。チームはこれによって敵を威圧し、守りの体勢へと追い込みます。
選手たちは自分の役割と責任を強く意識しているため、どう動くべきかが常にわかっています。いつプレスをかけるべきか。カバーシャドウでパスコースをブロックするために、揺さぶりをかける角度をどうするか。ワイドエリアで相手の動きを封じるため、どのタイミングでポジションを変えてピッチを狭めるか。こういったことを、時間も、空間も、選択肢も極度に限られた中で、判断します。
相手が深く食い込んできたら、ディフェンダーは高めのポジションでゴールを背にして果敢にプレッシャーをかけてくる。ワイドエリアにパスが飛ぶと、ミッドフィールダーは 1 対 1 に持ち込むかステップアウトする。そうして相手を抑え込んでボールを奪うのがとても上手いです。
接近戦で、人への意識が強いディフェンスで縦横の動きをコンパクトに保ちながら、相手のビルドアップを抑えて、広がる敵に対して理想的なエリアで何度もボールを奪取し、絶好のチャンスを作り出す場面は、とても見応えがあります。
ストライカーがミッドフィールダーへのパスコースを切りながらセンターバックにプレスをかけたり、ウィングが外側から内側にプレスしたりするなど、お互いために動き回り、2 つの役割を上手くこなす選手たちの、一貫した基本に忠実な動きから、ハウ監督とコーチングスタッフのきめ細やかな指導が見て取れます。
一方で、ミドルブロックやローブロック (主に 4-1-4-1 または 4-5-1) で守備に徹している時のマグパイズは、ポジションの規律を保ち、つながりながら中央突破を確実に防いでいます。
対戦相手に合わせて狙い所や戦略を変えるため、裏をかかれることはほとんどありません。
さらに、敵がワイドな攻撃を仕掛けてきたり、セットプレーになったりしたら、上背のあるパワフルなディフェンダー陣と名ゴールキーパーのニック・ポープが空中戦を制して、危険な場面を回避してくれます。
プレミアリーグでのディフェンスのスタッツを見ると、このディビジョンで活躍する多くの強豪チームを相手にしての健闘ぶりは、目を見張るものがあります。以下の Wyscout スタッツをご覧ください。
注目すべきは、失点が同率 1 位、チャレンジ・インテンシティが 2 位、xGA が 3 位、空中戦勝率が 4 位、90 分当たりの被シュート数が 5 位、そして PPDA が 6 位であることです。
機械のように正確な守備だけでなく、抜群の突破力も注目するべきチームです。
広範囲にわたる非常に質の高い守備が自慢のミゲル・アルミロン、アラン・サン=マクシマン、ジェイコブ・マーフィーの陣形が、一流のサイドバックとミッドフィールダーからサポートを受けられるサイドの攻撃を持ち味にしているのも納得できます。
たいていは、流れるようなパスの名手キーラン・トリッピアーが、右サイドでのアンダーラップかオーバーラップで、深い位置へ侵入して攻撃に参加します。そして守備力の高いレフトバックのダン・バーンが深い位置に留まり、この非対称の布陣でカバーに入ります。まさに絶妙なバランスです。
ジョエリントン、ジョー・ウィロック、そしてショーン・ロングスタッフも、ポジションチェンジ、オーバーロードを作り出す、3 人目のコンビネーションを促す、裏のスペースへ動き出す、攻撃のリセットが必要な場合はサポートに入るなどの動きで、自分たちの真価を発揮しています。
こうしたバリエーションには、ディフェンス陣を操り、ディフェンダーの心を惑わすという付加的な効果があります。ニューカッスルは、この戦略でよく優位に立ちます。
全員が同じ認識で、十分にスペースを空けている場合がほとんどなので、バックラインを崩して、動的なアドバンテージを利用する戦術をスマートに組み合わせられるだけでなく、ボールを取られたら間髪入れずに攻撃を仕掛ける素早いカウンタープレスも可能です。
カラム・ウィルソンやアレクサンデル・イサクのような裏への走り込みは、後方のディフェンスを広げて、ボールホルダーに素晴らしい選択肢を与える極めて重要な動きです。
さらに、相手のハイプレスを突破したり、選択肢を与えたり、ラインの間を深く下げるなどの場面では、中盤の名ドリブラー、ブルーノ・ギマランイスの存在が非常に重要です。
ディフェンスラインから組み立てていく能力を武器に前進していき、強気にウィングやフォワードへダイレクトパスを出す前か、ミッドフィールダーを 1 人見つけてプレスをかわす前に、プレッシャーを誘い絶妙な仕事をこなします。
ディフェンダー全員で組織的な布陣を取り、ボールを確保するので、前方へのディストリビューションで弱点をすべて露呈することができるため相手にとっては脅威です。
ウィングをフリーにするプレーに切り替える、前線にボールを上げる、ストライカーに送る、またはラインを崩すなど、あらゆるシナリオに応じてパスが出せます。
卓越したセットプレーもチームのプレーに欠かせない特徴です。抜け目のないテクニックで、いぶし銀のトリッピアーと大勢の背の高い選手たちが自由に連携できます。セットプレーに関してはヨーロッパでもトップクラスのチームです。
常に入念な下調べをして、綿密な計画を立ててくる彼らは、アウトオブプレーからのプレー再開でも楽しませてくれます。
短くて質の高いノーマル・ルーティーンに加え、キーパーの邪魔をしたり、おとりやブロッカーを使ったりするのが非常に上手いため、ハウ監督とコーチ陣は幾度となく相手のセットアップを翻弄しています。
スタッツで見ると、オフェンスに関しては xG が 3 位、90 分当たりのエリア内でのタッチ数が 4 位、90 分当たりのクロスボール数が 5 位、90 分当たりのシュート数が 6 位となっています。
エキサイティングなプレーや対戦の相手として対応しづらいところがたくさんあるなど、この攻守で完成度の高いマグパイズのチームは、間違いなく予想を上回る活躍を見せ、今節のプレミアリーグで旋風を巻き起こしています。
練習したことを本番で完璧にこなし、結果を出すために素晴らしい環境づくりを実現しているハウ監督は、層の厚いディビジョンで主要なチームへと変貌を遂げたニューカッスルの大きな立役者であり、とてつもなく大きな称賛に値します。
「最も重要なことは、我々が引き出した選手たちのメンタル面です。彼らはトッププロであり、性格も非常に良く、サッカーとリーグの順位という課題に正しく向き合うことを求めていました。」と、ハウ監督は Sky Sports に話しています。
「それこそがチームにとって非常に重要なことでした。我々が組織内で築き上げているグループを不安定にしたり、チームの士気を下げたりする人物を求めていませんでした。私はチームで成し遂げたのだと思います。」
2021 年 11 月にハウ監督が、残留争いから抜け出せずにいた勝ち星のない悲惨な状態のマグパイズを引き受けたことを考えれば、以来チャンピオンズリーグ出場まであと 1 歩のところにいるチームの再建は奇跡的な快挙です。
オーナーの資金力にも恵まれましたが、最下位のチームをイングランドで最有力のチームに押し上げたのは、ハウ監督の優れた手腕もその一因であることに疑いの余地はありません。