5分の振り返りが、成長に直結。明秀学園日立高校女子バスケ部は、映像を見てどう変化したのか?
<トップ写真提供:明秀学園日立高校女子バスケットボール部>
2021年11月よりHudlを導入している、明秀学園日立高校女子バスケットボール部(茨城県日立市)。高校バスケの全国大会であるウィンターカップへ、過去25回進出した経験がある実力校です。2021年も茨城県予選を1位で通過し、ウィンターカップ3回戦まで駒を進めています。
チームを率いる筑波大(つくば・だい)監督は、これまでのウィンターカップを振り返り、「試合間の日数が限られていることもあり、振り返らずに次の試合に挑んでいたこともあった」と話しています。ただ、今年はHudlでプレーを切り取りプレイリストを作成することで、効率良く短期間でも振り返りができるようになったそうです。映像での振り返りがチームにもたらした変化や、部活動で映像分析を取り入れる意義を伺いました。
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しっかり振り返り、相手の特徴を映像で掴む
ー現在、どのようにHudlを使用されているのですか?
筑波:スタッフが試合の重要なシーンを切り取って、ひとつのプレイリストにまとめ、選手個々で見るように伝えています。1試合を通して見ると時間がかかりますが、プレイリストなら5〜10分もあれば手軽に見ることができます。試合の行き帰りのバスの中でも、パッと見られますよね。
もちろんプレーを理屈で理解することも重要です。でも、映像で相手のプレーを焼き付けておくことはもっと重要だと思うんです。一人ひとりの選手の強みや弱み、相手がシュートを打ってくるタイミングなど。特にウィンターカップ前は、「映像を通じて直感的に相手を掴む」よう選手には指導していました。
ーHudlを導入する前も、映像を活用していたのですか?
筑波:はい。ただ今ほどスムーズに動画をアップできていませんでしたし、生徒も見ていなかったです。YouTubeに1試合をそのままアップして、かつDVDにも焼いていたのでかなり面倒でした(笑)。
試合後すぐに見れば「このプレーが上手くいかなかった」「このプレーではこう思った」などと当時の感覚を加味して振り返れますが、数週間後にアップするのがやっと。振り返らないまま次の試合を迎えている、ということも少なくなかったです。
選手からは、「(スマホやPCの)容量が足りず、手軽に見られない」という声が多かったですね。Hudlなら、スマホの容量を気にせずにどこでも見られます。進めたり戻したりするのもカクカクすることなく、比較的スムーズに行なえるので使いやすいですね。
ーデータを確認したところ、1週間で5時間も見ている選手もいます。
筑波:そんなに見てくれているんですね。でも、保護者の方々が見ている時間も含まれていると思います。コロナ禍で無観客試合だったり入場制限があったりするので、保護者の方がお子様の試合を観戦する仕組みとしても活用させていただいています。
YouTubeだと管理側の承認が必要でアカウントの管理が難しかったですが、Hudlではアカウント情報さえあれば見ていただけるので、その面倒さも省けています。
部活でHudlを導入し続けるためには、出資者である保護者の方のご理解が必要になってきます。子供の試合や練習映像を公開することで、保護者の方もメリットとして体感できているのは助かります。
客観視できる映像があるから、指導者も選手も納得できる
ーHudl導入後、映像を見る頻度は変わりましたか?
筑波:僕自身、実はあまり映像を見ないタイプで。というよりこれまでは時間がなくて、見られなかった、という方が正しいかもしれません。大会中はさらっと試合の映像を振り返ることくらいしかできていなかったですね。それが、今回のウィンターカップでは毎試合見ることができたんです。
ー映像を振り返ることで、試合での指導に影響はありましたか?
筑波:ありました。より細かく、具体的な指示を出すことができました。プレーを切り取っていく作業をするだけで、自然と選手の特徴を掴めているのだなと感じました。
映像をよく見ていると、「このプレーではいつもここが空いているな」「この選手はこの角度が得意だな」といったことが見えてきます。であれば、「ここだけは抑えよう」と絞って具体的な指示に落とし込むことができました。より確信を持って、指示を出せるようになったと思います。
特に県予選で対戦経験の多い高校の場合、「ここのコーチはこのプレーが好き」などといった先入観も入ってしまいます。過去の経験に頼ってしまうんです。でも冷静に考えて、選手は毎年入れ替わりますし、当然コーチも工夫してきます。映像があることで、客観的に“今の”対戦相手を捉えることができています。
これは私だけに限らず、選手も同じだと思います。
<写真提供:明秀学園日立高校女子バスケットボール部>
ー客観的に自分や相手を見ることは、選手の成長においても重要ですよね。
筑波:そうなんです。冒頭でも触れましたが、自分のマッチアップ(マークする)選手がどのような特徴を持っているのかを映像で把握しておくと、いざ実戦になった時にイメージがしやすくなります。チーム全体の課題となっているプレーを取り出して見ることも、よくない原因を明確に把握できるので重要です。
高校年代だと、プレーしながら「自分がどうなっているのか」を客観的に把握できる子はまだ少ないです。例えばディフェンスで「手を上げる」ことひとつにしても、本人は上げているつもりでも上がりきっていなかったり、カバーするべき角度に上がっていなかったり。
本人は上げる意識はあるので、口で言っても通じません。そこで映像があれば、「実際にこうなっているんだよ」と見せてあげられます。何よりも証拠になりますし、説得力がありますよね。
戦術を指導する上でも、映像を見せると伝わりやすいです。全体の動きを見せて、どうすれば上手くいくのかを視覚的に説明できます。コート上の選手は一部の動きしか見ることができていないので、全体を見せることでしっかり理解できるようになるんですよね。
徹底的に原因を追求。同じ時間でも、練習効果が変わってくる
筑波:これだけのことが年間66,000円(Hudl ブロンズプランの場合、税込)で実施できていると思うとありがたいです。部員が30名だとすれば、一人あたり年間2,200円。これならご理解いただきやすいですし、部活レベルでも取り入れやすいです。ゆくゆくはタグ付けもしていきたいので、ゴールドプランへ変更して、映像を活用する幅を広げていきたいと考えています。
ー具体的にどのように活用していきたいと考えていますか?
筑波:まずは映像を見る習慣を部員全員につけて欲しいですね。映像をよく見ている選手はパフォーマンスが伸びていると感じています。
どうしても、自分がどれくらい試合に直接関わるのかで温度差が出てきてしまいます。映像を見て考えることが、実際の技術向上に繋がるということを実感して欲しいですね。習慣付けへのきっかけになれば良いなと、今は移動中や夜(※)に各自で動画を見る時間を設けています。
※寮生活のため、夜に各自の部屋で動画を見る時間を設けている。
個人的には、練習映像をもっとアップしていきたいと思っています。例えば3on3やハーフコートでのオフェンスなどと、場面ごとの練習を重ねてプレイリストを作成します。試合だけでは数プレーしか取り出せませんが、こうすればひとつのプレーに対してより深く分析できますよね。
あとは、「ミスを徹底的に分析する」こともやってみたいです。ミスは、相手の強さに関係なく起きるもので、原因は決まっていることがほとんどです。
例えば、リバウンド時に相手にボールを取らせないためにするスクリーンアウト(リングに近づかせないよう、相手の動きを抑える)というプレーがあります。ある試合でスクリーンアウトが上手くいかなかったなら、抜き出してプレーリストを作成して、「どのプレーが、なぜ上手くいっていないのか」を明確にしたいです。
「この日はリバウンドがよくなかったから」と、選手たち自身に切り抜いてもらうのも勉強になりそうですね。映像を見るだけでなく、全員が映像に触れて学ぶ仕組みも作っていきたいと考えています。
ー一度自分でプレイリストを作ってみることで、映像を見てみようという動機付けにもなりそうです。
筑波:そういった循環が作れると理想です。30分の練習なら、切り取る担当の子は30分程度かかるかもしれませんが、他の子はプレイリストだけなので5分もあれば見られます。この5分、振り返るか振り返らないかで大きな差が出てくるんです。次の練習前や昼休みの隙間時間に見るだけでも頭の中で2回練習を繰り返したことになるので、吸収力が違うと思います。
ー最後に、育成年代での映像分析に関して、どのように感じられていますか?
筑波:若い世代は、映像を見ることに慣れています。スマホやPCを使うことも当たり前になっている時代です。見ようと思えばプロの試合だって見れますし、切り抜きであればSNSでもたくさん見つけることができます。僕が選手の頃にはありえなかったので、羨ましい限りです。
こうした時代背景も異なるので、映像に対する距離感は僕と選手らでは違います。そこを理解しつつ、選手が成長するひとつの手段として映像を提供していきたいと思っています。
われわれはプロコーチではなく、あくまでも教員。どうしても時間と労力に限界があって、ここまで実行に落とし込めていなかったのが現実です。Hudlを使って、効率良く映像分析を取り入れていきたいと考えています。