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WEリーグ優勝の影の立役者!?INAC神戸レオネッサ・星川敬監督が語る映像とデータの活用法

2021年9月に日本初の女子プロサッカーリーグとして開幕したWEリーグ。初代王者に輝いたのは、第16節まで無敗を貫くなど圧倒的な強さを見せたINAC神戸レオネッサ。

実は、無敗街道を突き進んでいた12月に行われた皇后杯でまさかの敗戦を喫したあと、星川敬監督が後半戦の切り札として選んだのが、WyscoutとStudioでした。
これらのテクノロジーがINACの後半戦の戦いぶりにどのような影響を与えたのか、星川監督に伺いました。
(聞き手:Hudl 高林 諒一

──WEリーグ初年度の記念すべき優勝おめでとうございました。まずはシーズンが終わった今のお気持ちをお聞かせください。

星川:ありがとうございます。1年5ヶ月という特殊なシーズンで、最初の見極めとして、上位との差を詰めなきゃいけないよ、というのがあったので、そのための時間はあるんじゃないかなと思っていたというか。

──あくまでもチャレンジャーというスタンスだったのですね。

星川:はい、順位(2020シーズン|なでしこリーグ)は2位だったとはいえ、(首位とは)勝点差9ありましたから。一方で他のチームが調子崩しているのは明らかだったので、練習一回ずつその差を少しずつでも詰めていこうということで。プレシーズンのレッズ戦を一個のターゲットとしていましたね。

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──たしか、最初に安本社長からコンタクト頂いたのが2月の半ばでしたね。中断期間ではあったものの、首位をひた走る中でシーズン途中から新しいものを導入するというのはすごく珍しいことかなと思います。どういったことがきっかけだったのでしょうか?

星川:海外にいるときから映像の描き込みの質を上げるソフトはずっと調べていたのですが、値段が高いものしかなかったんですよね。もちろんHudlの存在は知っていましたが、Studioの存在は全く知らなくて。その存在を知ってすぐに問い合わせをしたという感じですね。もっと早く知っていればシーズンインから使いたかったです。

──星川さんにお会いして説明したのが再開初戦をドローで終えた後の週で、どんな雰囲気なんだろうとドキドキしながらクラブハウスまで向かったのを覚えています(笑)

星川:そうですね、そういう点でも新しいものが必要なタイミングだったのでちょうどよかったです。

──その際、すでに名前上げていただいているStudioはもちろんですが、Wyscoutにもすごく興味を持っていただきました。どのようなところがポイントだったのでしょうか。

星川:Wyscoutに関しては、リーグで加入している他社データサービスとの違いを知りたかったなというところがありました。あとはStudioでの映像編集時の連携のところです。タグデータを読み込めるのはありがたいですね。
あとは、Hudlは世界のトップが使っているところがいいですよね。どうせなら世界のトップと同じものを使いたいじゃないですか。ペップ(・グアルディオラ)も同じものを使っているのか、とか、オール・オア・ナッシングに映ってたソフトが気になるな、同じもの使いたいな、とかっていう単純な憧れも含めて。

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星川監督のStudio編集画面

──スタッフ体制について教えてください。分析はどのような分担で行っていたのでしょうか。

星川:自分とGKコーチの2名です。元々アシスタントコーチもいたのですが、アメリカからオファーがあり、シーズン開幕直前に送り出しました。分析に関してはアシスタントコーチがいたときは彼と二人で行っていましたが、シーズン中はGKコーチと打ち合わせながら、編集は自分ひとりで行っていました。試合数もJに比べて少なかったのでなんとかなったかなというところです。アシスタントコーチがいたプレシーズン中は海外の映像も活用しながら選手にいいイメージを持ってもらうようにしていました。

──お一人で編集するというのはすごいですね…

星川:試合数が少なかったのでなんとかなりましたが、優勝が決まったゴールデンウィークの連戦はStudioの速さに助けられました。Studio無しではおそらく間に合わなかったですね。一試合見て終わるのが理想というか。どうしても普通だとそこから少しいじったりしなければいけないですが、その必要がないのは助かりますね。

──実際の作業を少し詳しく教えていただけますか。

星川:まずは映像を見ながら試合の時の印象とすり合わせをしてギャップがないようにします。SportscodeにはWyscoutのタグデータをダウンロードして、シーンを見ながらStudioで編集していくような形です。

──ミーティングはどれくらい行っていたのでしょうか。

星川:水曜に前節の振り返り、木曜に対戦相手への対策、試合当日朝に最後の確認、という3回は必ず行っていました。アウェイでは試合前日の夜にホテルで行うこともあったので、週4回の場合もありました。時間に関しては短く10分程度にまとめるようにしていました。それ以外にも、各自で確認できるように長めの映像を何個かYouTubeで共有していました。YouTubeに関しては、選手に対して内容に関する質問をしたりもしていましたね。

──それ以外に映像などで選手に対して行っていたことは。

星川:個人個人のプレー集を作って共有していました。Wyscoutの個人映像をダウンロードしたあとにタイトルやデータのスライドも編集して加えたりして。これは本当に労力が必要な作業ですが、選手はかなり喜んでくれるので。それで彼女たちがいいプレーをできるようになるなら、ぼくらにとってもプラスですから。
他にはアシスタントコーチがいればリアルタイムにタグを付けて、ということなども行いたかったのですが、なかなか現実的にそこまでは難しかったですね。

──Twitterでも田中美南選手が星川さんの映像がすごいと投稿されていましたね。

星川:チェルシーにいたときに、当時8-9年前ですが、トレーニングまでカットして選手が自分のタグを検索できる、ということをやっていて、すごいなと思った記憶もあり。やる人がいないなら自分がやれば同じじゃん、というか。あとは試合数が少ないのは利用しない手はないですよね。

──データの重要性に関してはどう考えていますか?

星川:指導する上で自分の印象だけになるというのは良くないと思っているんですが、数字はその裏付けになりますよね。WyscoutではPPDAが特に気に入っています。ポゼッション率からはなかなかわからない部分、引いた相手に運べていただけなのか、ハイプレスをかいくぐれていたのかが見えるのかなと。例えばジェフ戦では、相手の1トップ2シャドーがかなり走ってくるということがわかっていたので、走らせる、というのがテーマで。PPDAを見るとポゼッション率以上にその数値が現れていました。実際1トップの選手も前半で交代しましたし、向こうからしたら結構きつかったんじゃないかなと思いますね。
自チームをもう少し分析できていたら、こういうデータが、というのがあったと思うんですが、いかんせん時間がなかったので。本当はシーズンオフに一人一人のパフォーマンスも含めてきっちり振り返られる時間があるといいんですけどね。

──選手はStudioで作った映像を見たときになにかリアクションはありましたか?

星川:超ありましたよ。なにこれ!?ついにこのレベルが来たか、みたいな。
トップクラブに行けばいい環境が与えられるわけで、そういうものを工夫して与えられるならどんどんやりたいと思いますね。

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話は少し逸れますが、ウェアにしろ、スタジアムに設置するものにしろ、ヨーロッパは見た目から入るというか。スロベニアにいた頃、リーグで一番強いチームがアウェイ戦で僕らのスタジアムに来たときに、アウェイの入り口をデコレーションしだしたことがあって。ホーム感を出す感じで。かっこいいな、さすがだなと思いました。そういうものの積み重ねが歴史なのかなと思います。
Jだと同じ神戸をホームとしているヴィッセル神戸の試合に行きますが、自前のスタジアムではないですけど、雰囲気はすごくいいですよね。入っていく道からテンション上がりますね。

──INACも国立競技場でのホームゲーム開催など、新しい取り組みが光りました。

星川:クラブとしてその努力はできたかなと。ぼくらもいいスタジアムでやらせてもらったので。社長のパワフルさを感じました。

──そんな新しい取り組みにチャレンジするクラブのサポートができてありがたい限りです。

星川:StudioはWEリーグ優勝の立役者なんで。みんなも思ってると思いますよ(笑)
Studioを使い始めてからは、個人の映像もエフェクトのついた状態で欲しいというリクエストが出てきましたが、さすがにそれは時間的に不可能なので断りました(笑)
それくらいわかりやすいということだと思うんですよね。

──最後に、WEリーグの発展についてなにか提言があれば聞かせてください。

星川:他社さんですがデータプラットフォームをリーグで一括契約したのはいいことだと思います。それによって各チームの分析、その対応が進化してきたなと感じました。次はJリーグのように各クラブがどうやって差別化を図っていくか。相手に合わせて対応していくチームが現れ、さらにそれを打破するチームが現れて。各クラブの取り組みに期待したいです。
あとは世界のリーグとの差を分析することですね。自分は時間が取れていなくて分析できていないですが、それを取得できる環境だと思うので。

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