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スカウト向けデータは、トレーニングにも使える。佐久長聖女子サッカー部コーチが語る、Wyscout活用法

Hudl Japan

<トップ写真:本人提供>
※写真は星稜高校女子サッカー部指導時。


世界最大級のサッカーのデータベース『Wyscout』では、世界で約43,000を超えるチームの試合映像や、約460,000人の選手情報をチェックすることができます。この『Wyscout』を分析に活用しているチームの一つが、佐久長聖高校女子サッカー部(長野県)です。

コーチを務める月守麻美さんは、広島大学大学院卒業後に、星稜中学サッカー部で指導者としてのキャリアをスタート。その後は星稜ジュニア、星稜高校女子サッカー部のコーチ、星稜PEL(U-15女子サッカー)監督を歴任しました。

数多くの選手と向き合ってきた月守さんは、「練習に映像分析を取り入れたことで、選手のサッカーに対する理解が変わった」と語っておられます。数多くのプロクラブで活用されているデータベースを、どのようにトレーニングへ取り入れたのか。『Wyscout』の新たな可能性に迫ります。


石川・星稜高で指導者デビュー。「最初がここで良かった」

ーまず、月守さん自身の経歴について伺います。指導者になられたきっかけは?

月守:大学の部活でお世話になった先生の紹介で、星稜高校に行ったことがきっかけです。大学院時代は、1年目にほとんど授業を取り終えて、あとは論文を書けばいいだけの状態。2年目に入ったら、地元の兵庫に戻ろうと考えていたときでした。

先生から突然「星稜高校に行ってこい」と電話がかかってきたんです。言われたからには「行くしかない」と思い、大学院1年目の9月に見学へ行きました。ただ、当時は指導者になるつもりはありませんでした。教員免許を持っていたので、地元の学校の面接を受けようと考えていたんです。

実際、2月には兵庫の学校と面談をして、内定をいただけました。ただ、その場では返事はせず、広島に戻る電車の中で「明日、電話しよう」と。そんな時に、今度は星稜の河崎護監督(当時)から着信があったんです。

「お前、準備はできているのか?」。電話越しに言われたその言葉が怖すぎて、思わず「はい」と言ってしまいました(笑)。見学をして以降は連絡を取っていなかったので驚きましたね。電話が1日遅かったら、星稜には行ってなかったです。

ー実際に指導者として活動を始めてみていかがでしたか?

月守:星稜が最初で良かったです。しっかり5年間鍛えてもらうことができたので。

大きな組織ではなかったので、たくさんのことを任せてもらいました。チーム運営からバスの運転、経理、景品のお米運びまで。急に「大学女子サッカーの大会をつくってくれ」と言われたこともあります。わけも分からないまま日本中の大学に電話をかけて、なんとか10チームほど集めることができました。会場の手配や送迎、審判まで、すべて自分たちでやりました。

ーそうした経験は今に活きていますよね。

月守:そうですね。どこに行っても「あれ?星稜の?」と声を掛けてもらえます(笑)。

星稜ジュニア指導の様子
<写真:本人提供>


編集作業は10時間、夜中の3時まで

ー映像分析を導入したきっかけを教えていただけますか?

月守:新型コロナウイルスの影響で練習ができなくなってしまった時に、それまでやっていたトレーニングを、試合のどの場面で使うのか整理して、選手に落とし込みたいと思ったんです。毎日夜中の3時まで、10時間くらいは作業していました(笑)。

ー数多くある中から、試合をピックアップするのも大変ですよね。

月守:当時、イタリア セリエAのナポリを率いていたサッリ監督(現ラツィオ監督)の試合を見ていました。DAZNは試合のアーカイブが1週間しか残らなかったのですが、Wyscoutは長期間アーカイブが残っていますし、一人の監督を追えるのでありがたいです。

ー海外の戦術を取り入れることもあるのでしょうか?

月守:難しいところですね。スペインに行って実感したのは、海外クラブは『個』を求めているということ。それをふまえると、高校年代からチーム戦術にこだわりすぎても良くないのかな、と…。今は数的優位やスペースの作り方や、数的不利のときにどう相手を崩すかなど、最低限の原理原則を教えるようにしています。

ー星稜での経験を佐久長聖でも導入しているのですね。選手には具体的にどのようなことを伝えるのですか?

月守:映像を使って「練習で制限を設けたのは、こういう場面を想定しているからだよ」と説明しています。練習は、試合における一部のシーン、ピッチ上の一部を切り取って行ないます。ただ、切り取る前の全体像が分かっていない選手も多い。映像を使うことで、どの場面を想定しているのかイメージできるので、トレーニングでやったことを試合に落とし込みやすくなりました。

ボールの持ち方や、各ポジション特有の動き方など、選手個人のために映像を用意するときもあります。監督からの指摘に納得していない素振りを見せるのは、不満があるのではなく、何を指摘されたのか具体的に分かっていない場合がほとんど。そういった時は、モデルとなる選手の映像を渡してサポートしています。Wyscoutを使えば、世界レベルの選手の映像をすぐ見せることができるのでありがたいです。

ー選手には映像を見た後に感想などを求めているのですか?

月守:次の日に「どうだった?」と聞くようにはしていますが、強制はしていません。それでも選手は「今日の映像はまだですか?」と催促してくるなど意欲的です。逆に私のほうが宿題を課されている気分です(笑)。

できるだけ早く渡してあげたいので、帰りのバスを運転しながら、どこを切り取ろうか考えています。事前にイメージしておけば、映像を切り取る作業もスムーズにできますからね。

ー選手としては、明確なモデルを提示してもらえるのはありがたいはずです。

月守:「こういう動きもあるよ」と提示することで、自然とプレーのレパートリーが増えていると感じます。女子選手と接するなかで感じるのは、彼女たちはあまりプロの試合を見ないということ。だから、そもそもアイデアが少ない。こちらから提示してあげることが重要なんです。

例えば、フォーメーションを変えた時など、「どう動いたらいいのか分からなくて、攻撃が成り立たない」と言われることがあります。そういう場合は、個人の動きや、周りの人の動かし方が参考になる映像を探して渡しています。Wyscoutはチームのフォーメーションもすぐに分かるようになっているので便利です。

ー選手がプロの試合を見ないというのは驚きました。

月守:AC長野パルセイロレディースが近くにありますけど、見ている選手は少ないですね。WEリーガーになりたいというよりも、海外でのプレーを見据えている選手のほうが多いです。学校としても『世界へ』という方針を掲げているので、それも要因の一つだと思います。

ーご自身がプレーヤーだった時は、プロの試合は見ていましたか?

月守:見ていなかったです。戦術や立ち位置を考えたことはなく、ドリブルやパスなどの個人プレーが上手ければいいと思っていました。ただ、振り返るとトレーニングの意図は映像を使って説明してほしかったな、と。選手時代に自分が感じていたモヤモヤを解消する方法を、指導者として実践しています。

佐久長聖高校女子サッカー部指導の様子
<写真:本人提供>


指導者としての迷いを晴らしてくれた、選手たちの姿

ー映像分析が役に立った試合はありますか?

月守:相手がいることなので難しいですね…。基本的にトレーニングの濃度を高めるために使っているイメージです。相手チームのスカウティングをして、良かったなと思うことはありますよ。

相手の試合動画を入手して、編集はせずに、ミーティングで説明しながら見せています。相手の強みと弱み、自分たちのフォーメーションとの噛み合わせを確認しながら、理想的なプレーを伝えます。例えば、「右サイドの選手が上がっても戻らないから、こういう攻撃が有効だよね」といった感じです。

ー指導者としてのやりがいはどういった部分にありますか?

月守:もともとは勝つことがいちばんだと思っていたんですけど…選手たちの成長を感じられることですかね。

星稜での最後の年は、中学生をメインに指導していました。それまで高校生に与えていた練習メニューを簡略化してやっていたのですが、なかなか選手たちに理解してもらえず難しかったですね。それでも、選手たちには「トレーニングの意図が分かるようになったら、絶対に強くなるから」と伝え続け、徐々に理解する選手も増えてきました。

印象的だったのは、最後の大会。相手は前年の優勝校で、前半を0-1で終えハーフタイムに入り、私は指示する内容を考えて選手を待っていました。

すると、選手たちは「絶対勝てる!」と確信した様子で話し合いながらベンチに戻ってきました。トレーニングでやってきたことを元に、自分たちなりにどうすべきか考えていたんです。それまで「難しい練習を強制的にやらせていたのではないか」と、私の中で葛藤があったのですが、その姿を見て、やってきてよかったなと実感しました。

結局その試合は負けてしまったのですが、泣いている選手はほとんどいなかったです。選手も自分たちの成長を実感できたのではないでしょうか。

真っ白な画用紙を渡されて「自由に絵を描け」と言われても難しい。でも、3色のペンを使って、もしくはテーマが与えられたら描きやすくなりますよね。サッカーも同じで、トレーニングでアイデアを増やしたなかで、自由に考えることが大切なんです。ある程度の制限を与えて指針を示すのも、指導者の大切な役割だと痛感しました。

ー最後に、映像分析を取り入れるメリットについて一言お願いします。

月守:試合に向けて、細かな原理原則を落とし込むには練習が大切です。試合がすべてだと考える指導者も少なくありませんが、練習こそこだわりを持ってやるべきだと思います。映像は、選手のサッカーに対する理解を深める便利なツールです。指導のしやすさが全然違いますし、多くの人に活用してほしいですね。

<写真:本人提供>

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スポーツの映像分析システムを開発しているHudl(ハドル)社の日本チームです。 様々なTipsや海外事例、さらには国内のユーザーインタビューなどを定期的にお届けしていきます。 #Hudl #スポーツコード #ワイスカウト