どんな監督でも、60%しか目の前の試合は把握できない。ASモナコのアナリストが語るリアルタイム分析
プロサッカークラブにおける、リアルタイム分析の重要性はますます高まっています。
フランスのASモナコでアシスタントコーチを務めるAaron Briggs氏は、「どれほど有能な監督でも、目の前の試合を正確に把握できるのは60%まで」と述べています。
残りの40%をサポートするためのツールとして、ライブ分析はどのような役目を果たしているのでしょうか。Briggs氏に伺いました。
分析する意義は、事前に試合を体感しておくこと
ASモナコが考える分析とは、「クラブが理想とするサッカーを根幹に、対戦相手の強みや弱みにどう対応していくか」です。この考え方をもとに、より試合を想定した“リアルな”練習を作っています。
試合当日に相手がどのようなシステムやフォーメーションで来ようと、選手が対応できるようにすることが大切です。そのために、想定されるプレーを練習で再現し、対応策を複数明確にするようにしています。
試合当日の戦い方を、事前に選手が体感しておくこと。これを可能にするのが分析であり、アナリストが果たすべき役割だと思います。できる限りの準備をして試合に臨み、試合前から優位に立つことを目指して取り組んでいますね。
瞬時に原因を追求し、必要な情報を端的に伝える
どれほど有能な監督でも、目の前の試合について正確に把握できるのは60%までだと言われています。アシスタントコーチやアナリストの役割は、この残りの40%を把握して伝えることです。われわれは、キックオフから試合終了のホイッスルまで、常に集中して分析をしています。
試合中は、自分の目で見るだけでなく、ワイドアングル映像やテレビ放送の映像なども同時に見ます。そこにスタッツなどのデータを加味して、コーチ陣に正確な情報を伝えられるようにしています。
例えば、相手が右サイドでチャンスを作ってきた場合。分析することはたくさんあります。どのように突破されたのか?相手の意図は?戦術で負けたのか、個人のミスが原因だったのか?できる限りの情報をその場で把握しています。
コーチ陣に「今何が起こったのか?」と聞かれると、すぐに端的に答えられるようにしなければなりません。コーチ陣がより最善の判断を下せるよう、情報を取捨選択して伝えることも意識しています。
ハーフタイムでも、要点と改善策を映像で振り返る
ハーフタイムは、後半に繋げるための大事な時間です。短時間で明確に情報を伝え、選手に理解してもらうことが求められます。
選手が給水したりケアをしている最初の4〜5分に、スタッフ間で前半のキープレーやポイントをすり合わせています。その上で、要点を伝えるために3〜4つ映像を取り出しておきます。
例えば相手に上手くプレッシャーがかけられていないのなら、前半の攻撃のプレー映像を2つピックアップするんです。ワイドスクリーンに映し出しながら、私が考える解決策を複数提示します。それを受けて監督が最終的な決断を下しています。
選手にとっても、戦術ボードで説明されるよりも実際の映像を見て振り返る方がわかりやすいですし、響くんですよね。
組織内での分析プロセスへの理解も重要
ASモナコでは、シーズンを通じて60試合以上戦わなければなりません。その中で、抜けなく高い質の分析を継続することが難しいと感じています。
対戦相手の分析に加えて、自分たちの詳細分析。さらに試合当日のライブ分析と、試合後のレビューもあります。練習内容の振り返りも欠かせません。私が見てきた中でも、これらの分析フローを全てやりきり、正確な分析を続けられる人は少ないように感じています。
チーム内でこれらの分析プロセスや意義を理解して、取り組んでいくことが重要です。納得していないことに対して、熱心に取り組むことはできません。スタッフ間での意識統一も重要だと思っています。
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