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強豪・マンCも敷くビジネスモデル。テクノロジーで差は埋められる

Hudl Japanがプロサッカークラブの関係者に向けて、2時間半にわたって開催したウェビナー「世界から学ぶ」。

元マンチェスター・シティのヘッドアナリストで、現在はHudl社にてカスタマーソリューションチームのディレクターを務めるエドワード・サリー氏が、自身の経験をもとに世界のトレンドとデータ活用について解説しました。今回はそのウェビナーレポートの第2弾をお届けします。

基盤となる2つのゲームモデル

サッカーのビジネスモデルについてお話しします。

まずはチームのゲームモデルがあって、それを各ポジションにブレイクダウンした個人のゲームモデルがあります。2つのゲームモデルをもとに、スカッド(メンバー全体)のプランニング、つまりスカウトのプロセスに入ります。

スカウトのプロセスにおいては、まずは現状のスカッドを整理します。次に、獲得選手の要件を定義します。その後、財政的にその選手を獲得すべきかを判断し、IDP(個別の育成プラン)を考えていきます。そして最後に、どれくらいの試合に出場させるかのプログラムを策定。この5つのフェーズを1サイクルとしてメンバーを構成し、クラブに価値を生み出していきます。

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チームのゲームモデルでは、攻撃や守備でどのような振る舞いをしてほしいのかを記していきます。セットされた状態やトランジション(攻守の移行)、そしてセットプレーでのプレー選択のポイントを定義します。

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全得点の3分の1くらいは、セットプレーから生まれると言われています。クリエイティブなコーチであればセットプレーのバリエーションをいくつか持っていると思いますが、選手主体でセットプレーを行なう方法が3つあります。1つ目は、選手にセットプレーのアイデアを考えさせること。2つ目は、競争型にして選手の士気を高めること。そして3つ目は、なぜセットプレーが重要かというエビデンスを示して選手の関心を引きつけることです。

マンチェスター・シティは、アカデミーからトップチームまで、ゲームモデルに基づいて一貫したメッセージを届けるようにしています。アカデミー出身のフィル・フォーデンは現在、トップチームのレギュラーとして活躍していますが、彼はクラブのプレーモデルを理解しながら育っていった選手と言えます。

ゲームモデルの定義や教育、共有をフレキシブルに

個人のゲームモデルでは、各ポジションの選手にどのような振る舞いをしてほしいのかを記していきます。ここでは、攻撃、守備、技術、フィジカル、メンタルなど、細かい項目例を挙げています。

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チーム、個人のゲームモデルを評価する際に、世界中で使われているのが「スポーツコード」です。ゲームモデルの要素を、映像と紐付けていく作業を柔軟に行なうことができます。カスタマイズが容易で、リアルタイムでの分析も可能となっています。

また、このプロセスでは、選手にどのようにゲームモデルについて学ばせるかが重要です。私たちは「Hudl Academy」というeラーニングのプラットフォームを持っているので、ゲームモデルをeラーニングに組み込むようなプログラムを提供することができます。

各クラブのニーズに沿ったオーダーメイドのプログラムの提供や、スポーツコードのチュートリアルのコースなども用意しており、それぞれを組み合わせることで、クラブにとって本当に必要なものが手に入ります。

映像をチーム内で共有できる「ハドル」というサービスもあります。模範的な事例を集めて「ベストプラクティス」というラベルで分類しておくことで、理想的なシーンだけを振り返ることもできます。

テクノロジーの活用で差は埋められる

マンチェスター・シティは、2013年にマヌエル・ペジェグリーニ氏が監督に就任して、守備が大きく変化しました。トランジションが起こりボールがペナルティエリアを出たら、ディフェンスラインをペナルティエリアの外に出す。このトレーニングを積み重ね、2013-14シーズンはプレミアリーグで優勝。前シーズンと比べてオフサイドを奪う数が圧倒的に増えました。また、アカデミーでも同じ練習を行なうことで、アカデミーからトップチームに昇格した選手も、同じコンセプトでプレーできるようにしました。

そのマンチェスター・シティを事例に、1週間の過ごし方をご紹介します。2016年にジョゼップ・グアルディオラ氏が監督に就任して、1番の変化は、個々の細かな部分を追求をしていくことでした。選手との1対1のミーティングを繰り返し、その中で映像とデータをフル活用。ハドルとスポーツコードが重要な役割を果たしていました。

高いパフォーマンスを求めるチームでは、インプット、分析プロセス、保管、共有という4つのプロセスが重要です。1つ目のインプットは、どのようなデータを集めるのか。広いアングルでの映像とイベント(試合)データ、可能であればトラッキングデータも必要になります。2つ目の分析プロセスは、自チーム、トレーニング、セットプレー、対戦相手の分析になります。

3つ目の保管場所に関しては、Hudlのようなオンラインストレージや、外付けのHDDがあります。さらに、チームのためのフォーマットと、個々に対するフィードバックのためのフォーマットの2つに分けられます。そして、4つ目の共有は、Face to Face(対面式)とオンライン。Face to Faceには個々と全体の2つがあります。これらのプロセスは、チームに合わせて柔軟に設計されるべきだと思っています。

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グアルディオラ氏の周りには、優秀なコーチングスタッフのチームがいます。非常に成果が出たシーズンでは、彼らがどれだけプロフェッショナルに振る舞っていたかが示されていると思います。フィジカルコーチやGKコーチ、DFに特化したコーチなどがいて、現在アーセナルの監督を務めるミケル・アルテタ氏は、特にセットプレーの部分を担当していました。マンチェスター・シティやマンチェスター・ユナイテッドでプレーしたブライアン・キッド氏は、個人にフォーカスして、特に若手の分析やフィードバックを担当していました。

これを聞くと、プレミアリーグだからコーチが充実しているのではないかと思う方もいるかもしれません。私は、Hudlのようなテクノロジーを上手く活用することで、このギャップを小さくすることはできると考えています。

第3弾へ続く

●プロフィール
エドワード サリー (Edward Sulley)
各クラブや団体のニーズに合わせたコンサルティングや分析、システムを提供するHudl社のカスタマソリューションチームのディレクター。
19年間のプロサッカー界での経験を持ち、世界で最も速いスピードで成長している団体の1つであるシティ・フットボール・グループ(CFG)で11年間にわたり7クラブ(マンチェスター、ニューヨーク、メルボルン、横浜、ジローナ、モンテビデオ、成都)と働き、Hudlにジョイン。
CFGでの最後の5年間は日本と中国のクラブにおけるサッカーの戦略の策定と実行を主に担当。
経験や資格はコーチング、パフォーマンス分析、スポーツ科学、メディカル、スカウティング、リクルート、リサーチ、イノベーション、戦略、プロジェクトマネジメント、リーダーシップ、と非常に多岐にわたる。




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