ゲームモデルは、クラブ経営になぜ必要なのか?イングランド サッカークラブのプロフェッショナル5人が語る
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ゲームモデルは、クラブ経営になぜ必要なのか?イングランド サッカークラブのプロフェッショナル5人が語る

Hudl Japan

10月にプロサッカークラブ関係者の皆様を対象に開催した「Hudl Japanese Football Webinar」ウェビナーのレポート記事お届けします。イングランドサッカー界の最前線で働く5人のプロフェッショナルに、ゲームモデルの役割についてお話いただきました。

Hudlがパートナーシップを結んでいるAssociation of Sporting Directors(スポーツディレクター連盟)から、スポーツディレクターとして4名が参加してくださいました。バーンリーFC 前スポーツディレクターのMike Rigg氏、サウサンプトンFC フットボールディレクターのMatthew Crocker氏、ノリッジ・シティFC スポーツディレクターのStuart Webber氏、ダンディー・ユナイテッドFC スポーツディレクターのTony Asghar氏です。

さらにイングランドサッカー協会 (The Football Association、以下「FA」)にてシニアプロフェッショナルゲームコーチを務めるPhil Church氏も加わり、それぞれのサッカーへの考え方を話し合いました。

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ゲームモデルは、クラブそれぞれのサッカーを実現するためにある

はじめにゲームモデルとは、チームのビジョン・ミッションを体現するための指針であり、高いパフォーマンスを実現するためのワークフローです。

まずは2021年に見事プレミアリーグへの復帰を果たしたノリッジ・シティのWebber氏に、ゲームモデルの意義や活用法についてお聞きしました。

「サッカークラブ経営において、ゲームモデルが重要であることは間違いありません。例えば図書館に行くと、何千冊もの異なる内容の本があります。どこから見れば良いのか、全くわからない状況になりますよね。その中で迷わないよう読みたい本へ案内してくれるのが、ゲームモデルであり、チームを導いてくれる指針です」

では、指針があると何が良いのでしょうか?Webber氏は続けます。

「大きく影響を受けるのは、トップチームの指導・育成です。リクルーティングでは、クラブが目指すサッカーに合う選手を見極められます。すでに在籍している選手については、全体像から逆算して一人ひとりに求められる要素を明確にできます」

さらに、ゲームモデルはトップチームだけでなくクラブ全体の指針にもなると言います。「アカデミー(下部組織)なら、トップチームが理想とするサッカーを体現できる選手の育成に注力できます。フィジカルスタッフなら、選手が求められているパフォーマンスを理解した上で、手助けとなるデータを集めることができます。監督やコーチに求める要素も明確になってきます」

またサウサンプトンは、2012年にプレミアリーグに昇格し、その後継続して残留できています。Crocker氏に、サウサンプトンでのゲームモデルの捉え方を伺いました。

「ゲームモデルは、クラブの基盤となるもの。特にサウサンプトンは、選手獲得においてビッグクラブと金額面で立ち向かうことは難しいです」

プレミアリーグで戦っていくために、ゲームモデルが果たす役割は大きいと話します。「将来トップチームで活躍できる人材を“内製”できるんですね。将来トップチームで活躍できる選手を下部組織にて育成し、ビッグクラブが獲得する前段階で囲っておくことができます。クラブの経営陣も、明確な指針があれば『将来必ず戦力になる選手』として自信を持ってリクルーティングできると思います」


バーンリー前ディレクターのRigg氏も、同様の状況だったと話します。「限られた資金の中で、マンチェスターシティのようなビッグクラブと戦える良い選手を獲得する必要があります」

「バーンリーは、特殊なサッカースタイルを展開するチームです。でもゲームモデルが浸透していることで、“バーンリーのサッカー”を体現してくれる選手を効率良く獲得できています」

ひとつの“イングランドサッカー”の確立が、代表のパフォーマンス向上に

次に、連盟(FA)でのキャリアもあるRigg氏に、ゲームモデルをどのように活用されていたのかお聞きしました。

「ゲームモデルを作る前は、全てのカテゴリーを通じて指針となるサッカーがなかったように感じます。才能を持った選手はたくさんいましたが、彼らの能力を最大限に引き出せていませんでした。ゲームモデルの浸透によって、“イングランドサッカー”を一貫して組み立ていけるようになりましたし、今のイングランド代表の活躍に繋がっていると思います」


FAでは、指導者ライセンスにゲームモデルの考え方を組み込んでいます。現在連盟で指導者育成に関わっているChurch氏が説明します。

「基本的には、全てのライセンスカリキュラムの中に入れ込んでいます。もちろん、ライセンスによって視点は異なります。UEFAライセンスなら、ゲームモデルをいかに選手たちに落とし込み、ピッチ内外で体現させられるか。UEFA プロライセンスであれば、1シーズンを通じてどのようにゲームモデルを実現させていくのか。テクニカルディレクターであれば、どう実際の戦術に落とし込んでいくのか、を重要視しています」


エージェント時代に幅広くクラブを見てきたAsghar氏は、連盟に限らずイングランド全体でゲームモデルを活用する文化ができてきたと話します。

「かつてのイングランドでは、週末の試合に照準を当てて短期的な戦術を立てるクラブが多かったです。長期的なプランを実践できているチームは少なかったように感じます。ですがゲームモデルを持つことで、指導者ありきのプランではない、クラブとして指針が明確なクラブが増えました。サッカークラブ経営において、ゲームモデルは全ての基盤だと言っても過言ではないと思いますね」

勝ちに直結する、選手獲得のために

ゲームモデルと選手獲得の関係性について、具体的にバーンリー前スポーツディレクターのRigg氏にお伺いしました。
「先日ニューカッスルの買収が発表され、2022年の1月に大型海外選手補強をすると注目されていますよね。十数年前、私が在籍していた頃のマンチェスターシティによく似た状況だと思います」

「良い外国人選手を獲得するには、今ある様々な技術を駆使して、データを集める必要があります。テクノロジーをどこまで活かしきれるかが、重要になってくると思います」

ノリッジ・シティのWebber氏も、外国人選手の獲得は近年かなりやりやすくなったと話します。
「15年前はイングランド内の試合でも見るのに一苦労しましたが、今ではリアルタイムで見られる試合がほとんどです。その上ゲームモデルがあれば、すぐに自分たちのクラブに必要な選手を見極められます。世界中から、必要な戦力を見つけ出すのが可能です」

一方で、データをそのまま鵜呑みしないよう注意するべきだ、とも。「リーグによってサッカーのスタイルも違いますし、レベルも異なります。各国のサッカー環境を理解した上で、データとして取り入れるべきです」


サウサンプトンでは、日本代表でも活躍している吉田麻也選手が150試合も出場。どのような選手獲得システムがあるのかお聞きしました。

「スカウトチームの人数を大幅に減らし、フルタイムメンバーで構成するようになりました。クラブが理想とするサッカースタイルをより深く理解している、プロフェッショナル集団にするためです。選手を見る評価軸や、データ作成の基準を一定にするという目的もあります」


続いて、全てのチームに対して一貫したゲームモデルを作成し公表しているFAの情報収集について、Church氏が教えてくれました。

「試合分析班と選手分析班に分けて情報収集をしています。各国トップレベルの試合から得たデータと、選手個人に注目して得たデータを照らし合わせてより的確な分析をすることができています」

「ゲームモデルがあることで、育成・指導者養成・代表活動の全てをリンクさせて考えることができます。今どこを目指していて、将来どのような姿を目指しているのかが明確になっていると感じています」

重要なのは、将来を見据えた指導をすること

最後には、数多くのクラブや組織で選手育成システムを見てきたRigg氏が考える、選手育成システムのあり方について迫りました。

「ひとつ重要なのは、『一人の選手にいかに長く所属し続けてもらうか』かなと。指導者としては、新しい選手に目を向けがちだと思います。『今いる人材をいかに活かすか』という視点を忘れないで欲しいですね」

「特に育成年代においては、ひとつのシステムの中で長期的に育て、それぞれのペースで成長できるようにするのが最善だと考えています。その時点での能力だけを判断するのではなく、将来性も含めて判断することが重要です」

印象深い事例は、レアル・マドリードに所属しているガレス・ベイル選手だと言います。

「16歳の頃は、サウサンプトンでほとんど機会を与えられていない選手でした。最後の最後でチャンスを与えられ、活躍の場を掴んだ選手の一人です」

「もちろん全ての選手において同じことが言えるわけではありません。いろんなクラブで経験を積んだ方が良い選手もいます。大切なのは、選手一人ひとりの将来をしっかり見据えた上で、最善の未来を描いてあげることです」

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スポーツの映像分析システムを開発しているHudl(ハドル)社の日本チームです。 様々なTipsや海外事例、さらには国内のユーザーインタビューなどを定期的にお届けしていきます。 #Hudl #スポーツコード #ワイスカウト