「必要なものを必要なだけ」。巨大データベースを駆使したスカウト術
Hudl Japanがプロサッカークラブの関係者に向けて、2時間半にわたって開催したウェビナー「世界から学ぶ」。
元マンチェスター・シティのヘッドアナリストで、現在はHudl社にてカスタマーソリューションチームのディレクターを務めるエドワード・サリー氏が、自身の経験をもとに世界のトレンドとデータ活用について解説しました。今回はそのウェビナーレポートの第4弾をお届けします。
J1〜J3もカバー。巨大データベースをスカウトに活用
選手の獲得やスカウトについてお話しします。
2019年8月、世界最大級のサッカー専門データベース「Wyscout」が、Hudlのプロダクトに加わりました。Wyscoutは、世界400以上の大会の映像を網羅していて、選手やプレーの種類ごとにタグ付けをしているので、皆さんがリサーチをすることもできます。
日本ではJ1からJ3までカバーしており、毎年コンテンツが追加されています。スカウトはもちろん、ドローイングやプレイリストなど、パフォーマンス分析や現場でも役立つような機能を取り揃えています。
今春にリリースした「スカウティングエリア」というオプション機能を使えば、従来のスカウト部門の方々が行なっていたような手書きやエクセル上のスカウトデータを、Wyscoutに集約できるようになりました。iOSとAndroidのアプリもあり、スマートフォン上でオフラインでのレポート作成も可能です。
また「アドバンスドサーチ」では、ポジション、国籍、スタッツなどの条件を設定して、世界46万人以上の選手の中から検索を行なうことができます。フォーメーションの図に選手を当てはめていく「シャドーチーム」という機能もあるので、チームの現状把握や、獲得候補選手のランク付けを分かりやすく行なうことができます。
業界のプロが獲得候補選手をピックアップ
これらのプロダクトは、私自身が担当している「プロサービス」にも紐付いています。プロサービスは、各クラブのニーズに沿って「必要なものを必要なだけ提供する」という、コンサルティングに近い形のサービスです。
その1つが「プレイヤーサーチ」。各クラブがどういった選手を獲得したいかというニーズに合わせて、Wyscoutのデータから獲得選手候補のリストを作成します。私たちのチームには、サッカー界で分析やリクルートを担当してきた人材がいるので、安心して結果を見ていただけると思います。
プレイヤーサーチは4つのプロセスに分かれています。1つ目は、クラブの求める選手像を定義するリクルートブリーフィングです。2つ目は、イニシャルリストの作成。データサイエンスやスカウトの知識、グローバルなコネクションを生かして、クラブのニーズに沿った選手をピックアップしていきます。
3つ目は、イニシャルリストの分析を行ない、選手のランク付けをします。そして、4つ目は最終的な意思決定と交渉。後半の2つはクラブ側が主体となって進めるフェーズですが、私たちにもサポートできる部分は多くあります。
ツールを駆使してビジュアル的に選手を比較
とある南米のクラブでは、右サイドバックを探していました。クラブのニーズに合わせて15カ国から選手を検索したところ、104名が適合。そしてデータサイエンスのテクニックを駆使して、37名をイニシャルリストにピックアップ。そのうち7名は21歳以下で、非常に高いポテンシャルを持つ選手だと判断しました。
また104名の適合選手の中から、クラスタリングという手法を用いてグループ分けを行ないました。クラスター3(ドリブル数とクロス数の多い攻撃的選手で、守備は平均レベル)の選手がクラブのニーズにマッチしていたので、48名の選手を詳細にチェックしました。
提供するデータは、ExcelやGoogleスプレッドシートのほか、Wyscoutに取り込むことも可能です。BIツールやシャドーチームを使うことで、ビジュアル的に選手を比較することもできます。エージェントからの紹介選手や自身でリサーチした選手、現在の所属選手も加えることで、比較対象が幅広くなります。
選手と同様に、監督をリサーチすることもできます。欧州5大リーグとブラジルリーグの6リーグにおいて、シーズン中の監督の解任率を見ると、ブラジルが圧倒的に高いことが分かります。2019年には約9割のチームが、シーズン途中に1回は監督を交代しました。ブラジルのクラブで監督を続けるのは、非常に大変なことだと分かります。
Hudlは世界中の監督のデータを保持しています。ポゼッション率や勝率、得点数などの条件を設定して、クラブのニーズに合った監督を探し出すことができます。
●プロフィール
エドワード サリー (Edward Sulley)
各クラブや団体のニーズに合わせたコンサルティングや分析、システムを提供するHudl社のカスタマソリューションチームのディレクター。
19年間のプロサッカー界での経験を持ち、世界で最も速いスピードで成長している団体の1つであるシティ・フットボール・グループ(CFG)で11年間にわたり7クラブ(マンチェスター、ニューヨーク、メルボルン、横浜、ジローナ、モンテビデオ、成都)と働き、Hudlにジョイン。
CFGでの最後の5年間は日本と中国のクラブにおけるサッカーの戦略の策定と実行を主に担当。
経験や資格はコーチング、パフォーマンス分析、スポーツ科学、メディカル、スカウティング、リクルート、リサーチ、イノベーション、戦略、プロジェクトマネジメント、リーダーシップ、と非常に多岐にわたる。